研究課題/領域番号 |
23560178
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
原田 周作 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80315168)
|
研究分担者 |
山本 恭史 関西大学, 工学部, 准教授 (90330175)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 流体工学 |
研究概要 |
液体中に不均一に分散した固体微粒子の集団的沈降を調べるために,さまざまな粒子,流体,流路条件での微粒子懸濁液層の沈降実験を行った.また,懸濁部の濃度界面で生じる界面不安定に関する線形安定性解析を行い,界面不安定の支配波長と時間成長率を求めた.実験および理論解析結果の比較から,微粒子の集団的挙動と個別的挙動の遷移過程が濃度界面の解像度を表す無次元数によって定量的に表し得ることを確認した.また粒子の集団的な沈降速度に関しても,この無次元数の関数としてモデル化できることがわかった.これらの結果が得られたことにより,本研究課題の目標の1つであった微粒子の集団的沈降速度に関する統一的モデルの構築に大きく前進した. さらに上記の沈降モデルが任意の形状を有する流路内で適用可能かを確認するために,自然界で観察されるものに近い空間分布特性を有するフラクタル状の複雑流路を作成し,沈降実験を行った.その結果,沈降速度に関しては上記の沈降速度モデルでほぼ表し得ること,分岐流路での粒子の分配特性のような複雑流路中の占有率にも粒子の集団性が大きく関与することが明らかとなった. さらに,電解質(銅イオン)溶液と純粋な液体間の界面(混和界面)における不安定現象に関する実験装置を作成し,混和界面での銅イオン挙動の可視化を行った.この実験により,混和界面でも同様の空間スケールの界面不安定が生じることを確認した.以上の研究により,粒子懸濁液の濃度界面は,界面張力が十分小さい不混和界面,および拡散が十分小さい混和界面の両方と類似した挙動を示すことが明らかとなった. また研究分担者の協力によってこれら2つの界面(混和および不混和界面)挙動に関する数値解析コードを作成した.現在は解析コードが完成し,実験に対応した条件における数値計算を遂行中である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在,研究計画において目標の1つ目であった「微粒子運動の集団性/個別性を決定するパラメータの導出」についてはほぼ達成された.また2つ目の目標である「微粒子懸濁液の沈降速度に関する統一的モデルの構築」に関しては,単純な形状の流路についてはほぼ達成され,現在,任意形状の流路を用いて引き続き実験を遂行中である.さらに目標の3つ目である「不均一な分散系での粒子の自己拡散係数のモデル化」に関しては,今後,混和界面および不混和界面の挙動に関する数値解析と実験結果との比較を通して研究を行っていく予定である.当初の研究計画では,平成23年度および平成24年度ともに実験および数値解析を平行して行っていく予定であったが,実験に関しては計画よりも進展が速く,上記3つの目標の内ほぼ2つが達成されるなど,概ね順調に研究が遂行されたと判断している. 数値解析に関しては,当初の計画にはなかった研究分担者に協力を依頼したこと,それによって計算方法を変更したことなどの理由により,平成23年度は当初計画通りには研究が進まなかった.しかしながら現在,研究分担者の協力によって当初計画より精度の高い数値解析コードがほぼ完成していることから,3年間の研究計画の遂行に支障はないと判断している.
|
今後の研究の推進方策 |
現在までに研究計画時の目標の1つであった「微粒子運動の集団性/個別性を決定するパラメータの導出」について達成されたことから,今後は,残り2つの目標「微粒子懸濁液の沈降速度に関する統一的モデルの構築」と「不均一な分散系での粒子の自己拡散係数のモデル化」に絞って研究を行っていく. 達成された1つ目の目標に対しては,国内外の講演会および投稿論文の形にまとめ,積極的に発信を行っていく.残りの2つ目の目標「微粒子懸濁液の沈降速度に関する統一的モデルの構築」に関しては,現在行っている複雑流路中の沈降実験をより広範な条件で行い,任意の空間分布特性を有する複雑流路中へと沈降モデルの一般化を行う予定である. 平成24年度は,3つ目の目標「不均一な分散系での粒子の自己拡散係数のモデル化」を中心に研究を行う.具体的には,front-tracking法による不混和界面の計算,Stokesletを用いた粒子運動(混和界面)の計算の2つの数値計算を実験と対応する条件で行う.また実験では,平成23年度に行った電解質溶液を用いた混和界面の挙動に関する実験と,微粒子懸濁液を用いた沈降実験を行い,より微視的な観点で,界面近傍の分散挙動について明らかにする.これらの研究に関しても,達成度に応じて国内外の講演会での発表や投稿論文による発信を段階的に行う.
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に購入予定であったデジタルファインスコープに関しては,当初,濃度界面近傍の粒子挙動の実験・微視的観察に使用する予定であったが,別課題に使用する目的で購入したデジタルスコープによって当初の目的を達成できたため,購入を取りやめた.また,計画では想定していなかった懸濁液の上部界面位置を把握する必要が生じたため,新たに超音波センサ(Keyence UD-501)を購入した. この差額に関しては,研究に当初の予定以上の進展が見られたことから「これまでに得られた成果の発表に要する費用」の用途で使用する予定である.具体的には研究代表者および研究協力者の学会参加費および旅費として,海外2回,国内3回の成果発表の費用として使用する予定である.
|