液体中に不均一に分散した固体粒子の集団的沈降を調べるために,さまざまな粒子,流体,流路条件での微粒子懸濁液層の沈降実験を行った.また,懸濁部の濃度界面で生じる界面不安定に関する線形安定性解析を行い,界面不安定の支配波長と時間成長率を求めた.実験および理論解析結果の比較から,微粒子の集団的挙動と個別的挙動の遷移過程が濃度界面の解像度を表す無次元数によって定量的に表し得ることを確認した.また粒子の集団的な沈降速度に関しても実験を行い,単純な形状の流路中において,本研究課題の目標の1つであった微粒子の集団的沈降速度に関する統一的モデルの構築を行った. さらに自然界で観察されるものに近い空間分布特性を有するフラクタル状の複雑流路を作成して実験を行った結果,分岐流路での粒子の分配特性のような複雑流路中の占有率にも粒子の集団性が大きく関与することが明らかとなった.得られた実験結果から任意の形状を有する複雑流路での重力分散挙動に適用し得るような流動予測モデルを構築した. さらに濃度界面近傍での粒子運動のメカニズムについて調べるために,電解質(硫酸銅)溶液と純粋な液体間の界面(混和界面)における不安定現象に関する実験を行った.混和界面における銅イオンの挙動に対して,物質の吸光度の差を利用した濃度場の非接触測定装置を構築し,拡散の影響の大きい混和界面においても同様の空間スケールの界面不安定が生じることを確認した.また研究分担者の協力によって混和および不混和界面挙動に関する数値解析を行った.これらの数値解析結果,実験結果および線形安定性解析結果との比較から,懸濁液の濃度界面における粒子運動の詳細が明らかとなった.
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