研究課題/領域番号 |
23560179
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
坪倉 誠 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40313366)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 流体工学 / 乱流 / 空力 / ブラフボディ / ラージエディシミュレーション / 抵抗低減 |
研究概要 |
本研究では、以下の5つの研究課題を段階的に進めることで、実用ブラフボディに見られる各種後引き渦と境界層剥離の複合的な物理メカニズムを解明し、戦略的な空力抵抗低減制御の実用化へ向けたノウハウ構築を目指す。(1)簡易形状車体モデルを対象とした空力抵抗発生メカニズムの解明、(2)吹き出し&吸い込み等の要素制御技術の数理モデル化、(3)後ひき渦対の不安定性成長、(4)簡易形状車体モデルを対象とした空力抵抗低減制御技術の提案、(5)実走行状態における制御技術の効果検討、(6)実車両形状モデルを対象とした戦略的空力抵抗低減制御技術の提案。本年度は、当初研究計画として(1)~(3)に取り組むことにした。(1)として、マツダ(株)と共同して開発した、市販セダン車の車体上部の特徴的な渦構造を再現した2種類の簡易形状車体モデルを対象に、ラージエディシミュレーション(LES)解析を実施した。まず適用したシミュレーション手法により車体周り渦構造が再現できているかを検証するために、マツダ(株)で実施された風洞実験による車体周り総圧分布の可視化結果と詳細な比較を行い、その妥当性を確認した。次に抵抗低減の発生メカニズムを解明するために、これら渦構造の相互作用について調査を行った。この結果、フロントピラーから発生する渦を強めることでリアウィンド近傍でフロントとリアピラーの渦間で強い相互作用が起こり、リアウィンド上での剥離が促進され、抵抗が増加することがわかった。次に(3)と(5)として車体をピッチおよびヨー方向に強制的に振動させることで、これら車体周り渦を励起し、その車体抵抗に与える影響を調べた。これらの結果より、車体のフロントおよびリアピラーの渦構造を変化させることで、抵抗低減制御が可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度予定した(1)簡易形状車体モデルを対象とした空力抵抗発生メカニズムの解明(2)吹き出し&吸い込み等の要素制御技術の数理モデル化(3)後ひき渦対の不安定性成長について、(1)についてはほぼ当初の目標を達成することができた。(3)についても、外部から強制加振により基礎的知見を得ることができた。これに加えて、簡易形状のみならず、実形状車体についても同様の加振実験を行い、簡易形状で得られた基礎的知見が実車形状においても有効であることが確認できている。これは次年度以降に実施予定の課題であったが前倒しで本年度より実施した。ただし予定した(2)については時間の制約で実施できず、来年度以降に持ち越す。以上を総括して研究の進行順序を変更したものの、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の課題について、段階的に取り組む。ただし(2)は今年度持ち越し分である。また(6)の実車形状については一部前倒しで今年度既に進めている。(2) 吹き出し&吸い込み等の要素制御技術の数理モデル化。ここでは吹き出し吸い込みを用いた自由せん断層のフィードバック制御の適用を想定して、LES境界条件の数理モデル化を実施する。(4) 本年度得られた、車体周りの後ひき渦構造と車体後部リアウィンドウでの剥離挙動に対する相互作用に対する知見をもとにして、各渦に対して(2)と(3)で検討した要素制御技術の効果的な適用方法を提案する。例えばリアウィンド剥離に対する直接制御と共に、剥離に最も寄与する後ひき渦の制御をフィードバックで実施する。20%程度の抵抗低減を目標とする。(5) (4)で提案した抵抗低減手法が実走行環境下でも有効であるかを検証するために、研究協力者から提供される予定の実車走行時の姿勢変化(ピッチ、ロール運動等)データを利用して、車両運動を再現したLES解析を実施する。同様に、実走行中の大気乱流による変動風特性を接近流に組み込み、検証を行う。ここでは研究協力者から提供される予定の、実走行時の車体に作用する変動風データ(変動風速と車体に対する相対ヨー角の時系列データ)をシミュレーションで再現する。(6) 簡易形状車体で得られた知見をもとに、実車セダン形状車体に対して解析を実施し、実用化評価を行う。簡易形状との大きな違いは、フロント・リアピラーに起因する後ひき渦の他、フロントタイヤハウスや床下、ドアミラーからも後ひき渦が発生し、より複合的な流れ場になっている。これらの部分の渦の制御は、簡易モデルのピラー渦と比較して一般に困難であるが、必要に応じて能動的制御を試みる。
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