研究課題
原油価格の高騰や環境負荷への考慮から,航空エンジンには更なる性能向上が望まれている.低圧タービン動翼は,その高効率化が航空エンジンの性能向上への大きな鍵となっている.しかし,低圧タービンは効率の維持のため段あたりの動翼枚数が多く,重量が大きい.そこで,効率を維持しつつ低圧タービン動翼枚数を削減する高負荷化技術が求められている.低圧タービンの高負荷化阻害要因として,翼面境界層損失と翼後縁におけるベース圧損失が挙げられる.タービン翼枚数の削減により逆圧力勾配の増大を招くため,剥離発生の危険性が高まる.さらに,航空機が高高度を飛行する際の低レイノルズ数条件において,境界層剥離が生じやすくなりタービン効率の著しい低下を引き起こす要因となる.本研究では高負荷低圧タービン翼負圧面に剥離制御デバイスを付加し,更に翼後縁厚みを削減した翼を考案した.実験と数値計算の両面から調査を行い,低圧タービンの高負荷化・高効率化の実現に寄与するデータを得た.本研究で調査したデバイスは,1.単独2次元ステップ状デバイス(TDM)2.3次元ディンプル(DIM) 3.後縁形状削減(TER) 4.複合デバイス(TDM+TER)である.これらの翼の空力性能及び境界層計測を7枚直線翼列試験装置を用いて測定し,デバイスの効果を詳細に比較検討した.調査したレイノルズ数は,超高空巡航状態(Re=40,000)から地上近傍(Re=170,000)までである.本研究の結果,1. 剥離制御デバイスにより,翼負圧面における剥離が縮小し,損失が低減する傾向を確認した.2.デバイス高さが高いほど,剥離抑制の効果は高いが,同時に乱流損失の増加をもたらす. 3.翼後縁厚みの削減は損失の低減に寄与する. 4.乱流促進デバイスの付加と翼後縁厚み削減を複合化した翼型において,広範囲のレイノルズ数条件で損失が低減することを確認した.
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