研究課題/領域番号 |
23560182
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
茂田 正哉 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30431521)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 流体工学 / プラズマ工学 / ナノ粒子 |
研究概要 |
本年度は、実験のみならず理論および数値計算による両面からの研究により、ナノマテリアル創製システムの土台を成す個々の基礎プロセスに対して多角的なアプローチを図った。まず実験的研究においては、化学工学的立場から生体親和性の強いチタンがプラズマ流によってホウ化物ナノ粒子を形成する過程に注目し、原料供給量や分率が最終生成物のサイズや機能性に与える影響を明らかにした。また流体工学的立場からは非定常性の強い流動場に着目し、動的はく離現象や音波発生時の渦構造を熱線プローブ計測によって詳細に調べ、その知見を基に、はく離制御および音波制御にも成功した。一方、理論的研究においては、これまで研究代表者が独自に構築してきた二成分系ナノ粒子群の集団的成長過程の数理モデルの深化を図り、ホウ化チタンナノ粒子群の形成過程をより詳細に明らかにした。また今まで1次元問題にしか適用できなかった金属ナノ粒子群生成モデルを2次元プラズマリアクター内における生成過程計算に拡張することにも成功した。同時に今後の大規模計算における計算負荷を軽減するために、ナノ粒子群成長の本質的な機構を考慮しながらも簡易的に計算することができる方程式系を導いた。さらにプラズマ流中における前駆体溶液の分裂および蒸発過程の解析手法の土台を構築すべく、粒子法の一種であるSPH法を用いて、気液界面の大変形を伴う液柱分裂過程および二相噴流、マランゴニ対流を伴う複雑熱流動場のシミュレーションにも成功した。加えて誘導結合型プラズマ流における極めて複雑な電磁熱流動場の3次元数値計算にも成功し、その渦構造を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東日本大震災による研究の遅れが主な理由である。本年度の初頭は、大気圧中温プラズマ装置の転倒による故障、電源の復旧の遅れ、度重なる余震によって実験を遂行できる環境にはなかった。そのため、年度前半の研究計画を変更し、理論的研究の深化を図ることで前述の成果を得ることができた。年度後半にはシステムの土台を成す個々の基礎プロセスに着目し実験を行なうことはできたが、大気圧中温プラズマ流システムによるナノマテリアルの創製には成功していない。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、エアミスティノズルと送液デジタルポンプとを組み合わせ、プラズマ流中に前駆体溶液を原料として注入するためのたシステムを作成する。そして実際に大気圧中温プラズマ流を用いてナノマテリアルを創製することを試みながら、流動特性と物質機能の相関を見出し、システムの最適化を図る。また同時に、これまでに得られている知見を基にして、数理モデルや計算アルゴリズムの深化も図り、スーパーコンピューターを利用した高精度の大規模計算による現象解明も試みる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、当初計画していたプラズマ発生部の加工、エアミスティノズルおよび高速データ処理装置の購入を次年度に延期することによって生じたものであり、延期したプラズマ発生部の加工、エアミスティノズルおよび高速データ処理装置の購入に必要な経費として平成24年度請求額とあわせて使用する予定である。
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