本年度は、理論・数値計算および実験の両面から、ナノマテリアル創製システムの土台を成す個々の基礎プロセスに対して多角的にアプローチし、研究の更なる深化を図った。まずナノ粒子群の集団的成長および移流・拡散輸送現象を同時に矛盾なく、かつ簡易的に数学表現できる方程式系を導き、さらに非物理的な数値拡散を抑えながら解析を進めることのできる計算アルゴリズムを構築した。またその適用範囲を拡張し、複数のプラズマジェットおよび非電離気体が相互作用することで形成される複雑な流動場を明らかにすると共に、磁場による流動制御の可能性を示した。加えてプラズマ流中における前駆体溶液の分裂および蒸発過程の数値解析手法の土台を構築すべく、粒子法の一種であるSPH法を用いた気液二相噴流のシミュレーションも試みた。またプラズマ流の制御において必須となる流体力学的な不安定性に関する知見を得るため、二次元翼と噴流を組み合わせて生成した局所外部撹乱に対する境界層受容性や、ストリーク構造と噴流の干渉による不安定化の過程を実験計測によって調べた。同時に数値計算とも組み合わせ、渦輪衝突によって生成される局所撹乱や縦渦の前縁受容メカニズムについても詳細に調べた。以上の研究を通して見出された知見は、流体工学・プラズマ工学・化学工学・材料科学に渡る分野横断的なものであり、学際的な成果を得ることができたと言える。また本年度だけで国内外を合わせて5件の招待講演を行なったことからも、本研究に対する注目度は高く、今後の更なる展開が期待されていると言える。
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