研究課題/領域番号 |
23560189
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
長谷川 富市 新潟大学, 自然科学系, 自然科学系フェロー (80016592)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | マイクロオリフィス / 流動 / 流量低減 / 降伏応力 / 膜 / 二酸化炭素固定 / 疎水性水和 / 静電気 |
研究概要 |
孔径が10~200マイクロンメータの各種金属と高分子膜から成るオリフィスを通る、超純水、純水、水道水、各種界面活性剤水溶液、アルコール水溶液の流量と圧力を測定し、これらの液体の流動特性を実験的に調べた。この結果、孔径25マイクロンメータ以下のオリフィスでは液体を装置に注入した直後は理論値に近い流量が得られるが、時間経過と共に流量が減少し数日後にはほぼ零となる現象(流量低減現象)が見出された。この現象はオリフィス種類や水の種類の違いに拘らず生じたが、界面活性剤水溶液やアルコール水溶液では生じなかった。なお、この現象はオリフィスを水中に浸漬して置くだけでは生じず流動を行うと生じることを確認している。したがって本現象は流動に伴って水中に何らかの物性的変化が生じる特異現象と見なせる。 流量低減現象の液温による影響をみるために、液温を25度Cから5度Cまで変化させた。この結果、約20度C以下で流量低減現象が生じやすいことを見出した。これは生物学的に水の特性がこの温度付近で変化するという報告と一致する内容である。 流量低減効果を示すデータは定性的には同じものの定量的にはかなりの程度でばらつきが生じた。この原因を探るために金属オリフィスにアースを付けて実験したところかなり安定した値が得られた。このことから流量低減現象にはオリフィス表面に在る静電気が関係していることが推察された。 流量低減現象時にオリフィス孔内部で何が起きているかを調べるために、流動実験後のオリフィス孔周辺を電子顕微鏡で観察した。この結果、孔周辺や孔内部にオリフィス材料である金属と由来不明の炭素とを主成分とする膜の存在が確認された。さらにこの膜成分の由来を調べるために脱気処理を行ったところ炭素の含有量が低下したことから、この膜中の炭素は水に溶けた空気中の二酸化炭素の疎水性水和により固定されたことが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要の欄で述べたように、本実験で初めて見出された流量低減現象はさまざまな因子をその原因として含んでおり、現時点でも安定した再現性のあるデータが得られていない。このため現象の主要因を探るべく、水純度の向上、各種液体の試供、各種材料のオリフィスやオリフィス孔縁形状の異なるオリフィスの使用、液温変化、アースの有無、など条件を変えた多くの実験を行った。このため多くの時間と経費を要した。加えて純水製造装置の故障が生じその修理に約2か月の期間を要した。このようなことから、オリフィス実験の次に計画している2次元マイクロチャネルの実験に進めないでいる。24年度はオリフィスの実験を纏めて論文を書き、次の2次元マイクロチャネルの実験に進む予定である。このような理由から、研究目的の達成度は「やや遅れている」である。
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今後の研究の推進方策 |
オリフィスによる実験は次年度四半期で終了し論文を書く。その後2次元マイクロチャネルを用いた実験装置の作製と実験に取り組む。
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次年度の研究費の使用計画 |
オリフィスは流量低減現象が生じて膜ができると、基本的にそのオリフィスは使用不可となる。オリフィスの孔は特注で開けてもらうので経費が嵩み、その分旅費などの経費を圧縮せざるを得ない。次年度も似た状況にあるがオリフィス実験の占める割合は少なくなるので、2次元マイクロチャネルの実験には支障がない。既にマイクロチャネル用のガラス平板は購入済である。次年度は、論文投稿に係わる費用、旅費、実験器具や装置製作のための費用が必要である。
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