研究課題
直径100~10ミクロン、厚さ20ミクロンの各種オリフィスを用いた水道水や超純水の流動実験の結果以下のことが明らかとなった。直径100~50ミクロンのオリフィスでは水はほぼ理論値通りに流れるが、直径25ミクロン以下のオリフィスでは実験開始からの経過時間につれて流れの閉塞が生じた。閉塞の生じる時間は1時間以内から数日の間で一定しなかった。超純水は水道水よりも閉塞が生じやすかった。オリフィスを水中に浸漬したままでは閉塞は生じないことから流れが閉塞の原因となっていることを確認した。閉塞の生じたオリフィスを電子顕微鏡で観察したところオリフィス内に(1)膜が生じている場合と(2)何物も無い場合のあることが判明した。(1)の場合の膜の成分を調べたところオリフィス母材である金属と炭素、窒素、酸素が主たる成分であることが分かった。また、ラマン顕微鏡観察により膜は有機物を含むことが明らかとなった。超純水の場合この有機物は空気中の成分が試験水を通してオリフィス孔内で膜となることを確認した。閉塞の起きる以前の流動において水温を急速に降下させる実験を行った。その結果、約30度Cから20度C以下に急冷すると流れの閉塞または一部閉塞が生じた。この場合に膜は生じなかった。また、20度C以下に急冷され閉塞したオリフィスをそのまま水に浸した状態で水温を30度台に戻すと、閉塞がそのまま継続する場合と閉塞が無くなり流れがもとに復する場合のあることが明らかとなった。
3: やや遅れている
本研究ではマイクロオリフィスを通過する水の流れの特異性を解明したのちに、矩形マイクロ流路を用いた実験を行って水の構成方程式を検討する予定であった。しかし、マイクロオリフィスによる実験結果は空気の試験水への溶存や水流の帯電が関係することが徐々に明らかになったためため、流体力学の他に物性物理、物理化学、電気化学など多岐の分野の知識と検査が必要となった。このように研究がやや遅れている理由はマイクロオリフィスの各種実験と検証に時間がかかっているためである。
膜が生成された場合について、膜生成の原因を追究する。現時点で試験水に溶けこんだ空気が原因であるとの実験結果を得ている。次は空気中の何が膜生成の原因となるのかを明らかにする。生成された膜は有機物を含むことが分かっているので、まず水中に溶存している有機物を紫外線(UV)照射により無機物に変え、その後流動実験を行う。もしUV照射後の水で膜の生成が無いならば、溶存有機物が膜となっていることになる。また、UV照射後の水からも膜が生成されるのであれば無機物から有機物が生じる、ある種の化学合成が行われていることになる。2005年度は上記の実験を行う。またデータの解析と纏めにより論文を作成しjounalに投稿する。なお初年度の研究計画書にはマイクロ矩形流路を用いた新たな実験を行うことと記したが、実験場所のある建物の改修計画が早まって実験場所の確保が難しくなり上記の新たな実験は困難となった。代わりに上記のように膜生成の原因を徹底的に追及するつもりである。
マイクロオリフィス;100,000円、データ整理用パソコン;80,000円、紫外線ランプ;60,000円、論文校正費;150,000円、旅費;60,000円、報告書作成費;30,000円、薬品等消耗品;20,000円。合計 500,000円
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