直径20ミクロンメータのマイクロチャネル(マイクロオリフィス)を通過する、超純水、脱気した超純水、空気との接触をを絶った超純水、Arガスを吹き込んだ超純水、紫外線を照射した超純水、水道水、について圧力と流量を測定した。圧力は50~1000Paである。得られたデータの数は10000点を超えている。これらの膨大なデータの解析と纏めを行い、上記の水の流れはいずれも時間経過と共に流量が低下し、最終的には流れが零となる停止状態の生じることが分かった。この停止状態は、超純水の方が水道水よりも短時間で生じた。超純水に何らかの異物の混入・溶解があると流動性が向上する(停止が遅れる)。停止状態後のマイクロオリフィスを取り出し顕微鏡観察すると、(1)オリフィス内に何も見えない、(2)オリフィス内に格子状構造の水が見えるが乾燥すると何も見えない、(3)オリフィス内に膜が見える、という3つの場合のあることが明らかとなった。(3)の膜について、空気に晒した超純水と、脱気した超純水・空気との接触を絶った超純水・Arガスを吹き込んだ超純水との比較から、この膜は空気中の成分から生じたことを明らかにした。また、オリフィスを通過する水は帯電していることを明らかにし、イオンが膜の生成に関わっていることを見出した。 さらに、膜の化学組成を顕微ラマンやIRにより調べ、膜は有機物から成り立っていることを示した。また、空気を溶解した超純水に紫外線を照射して水中の有機物を破断し、その後流動により膜を形成しこの膜の化学組成を調べたところ、紫外線を照射しない超純水から生じた膜と同様の化学組成を得た。この結果、マイクロオリフィスを通る水は、流動により生じた電荷の作用により、水中に溶解した空気中の無機物から有機物を合成することが分かった。この内容は生命の起源に関わる可能性がある。本内容は英文誌に投稿予定である。
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