研究課題/領域番号 |
23560191
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
角田 博之 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (10207433)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 流体工学 / 乱流 / 拡散 / 可視化 / 計算物理 |
研究概要 |
本研究では,一様流に対向する二次元乱流噴流による高シュミット数物質拡散場について,乱流場の瞬時構造変化に対するスカラ場の動的挙動を実験的に調べ,速度場の構造と濃度場の統計的特性との関係を明らかにし,得られた結果を基にラグランジュ手法によるモデル構築を行うことを目的とする.次の研究実績が得られた.1. 二次元対向噴流における乱流場の構造と濃度場の統計的特性の実験的調査 実験には現有開水路を利用することを計画していたが,年度半ばに実験室の移動が決まり,現有設備を解体せざるを得なかった.このため,新規に開水路を設計・製作することになった.年度内に現有水路の解体と新型水路の設計を終えた.乱流場と濃度場の瞬時構造を1 kHz程度の高時間分解能でとらえるため,高速度撮影に適した連続発光YAG レーザと高速度カメラの機器選定を行って年度内に購入して動作確認を行い,研究遂行に必要な性能を備えていることを確認した.また,本研究の調査対象であるスカラ乱流場の理解に役立てるとともに,可視化を含めた速度場と濃度場の同時計測技術の確立を目的として,スカラ物質を含んだ流体を円形ノズルから瞬時放出することにより形成される渦輪が密度界面と干渉する際に,渦輪中のスカラ場の動的構造変化を調べ,学会発表した.2. ラグランジュ手法によるスカラ乱流の確率論的モデル構築 研究初年度であることから,スカラ乱流場に関する文献調査ならびに情報収集を行った.また,対向噴流と同様に噴流揺動が顕著な流れとしてフリップフロップ噴流場の数値解析を行い,得られた成果を学会発表した.今後,本解析で得られた速度場データをラグランジュ場の解析に利用し,高シュミット数スカラ拡散場の数値解析に発展させていくことで,研究の進展が期待できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画では,実験に現有設備である開水路の利用を予定していた.しかし,学内事情により年度末での実験室の移動を余儀なくされ,水路の搬出が困難であったことから水路を含む全ての実験設備を解体し,別の部屋で実験を継続せざるを得ない状況となった.これに伴い,開水路を新規に設計・製作する方向に研究計画を変更したことが研究の多少の遅れの要因となった.しかし,装置解体までに行った実験から,研究目的の達成に必要な計測装置の準備や計測法などのノウハウの蓄積は計画通り順調に進んでおり,研究第2年度でこの遅れをカバーすることは十分に可能である.
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今後の研究の推進方策 |
初年度で生じた研究の遅れを回復するために,研究第2年度前半期において実験用開水路の完成に全力を注ぎ,二次元対向噴流拡散の実験を早急に開始する.そして,実験で得られた速度場と濃度場の同時測定データを固有直交展開(POD)法を用いて解析し,当初の研究計画通り,二次元対向噴流における乱流場の構造と濃度場の統計的特性との関係を調べることを目指す.また,並行して,複雑乱流中でのスカラ乱流場の数値解析をラグランジュ手法を用いて行い,実験結果との比較からモデル構築を考える.
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次年度の研究費の使用計画 |
実験では光源用レーザや速度と濃度場観測用の複数台のカメラを制御する必要があり,現有のタイミングパルス発生器一台では不十分な可能性がある.そこで,新規にパルス発生器を購入する.また,水路製作に当たって,アクリル板などの材料費として使用する.その他,研究成果の学会発表ならびに情報収集のための旅費として使用する.
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