研究課題/領域番号 |
23560191
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
角田 博之 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (10207433)
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キーワード | 流体工学 / 乱流 / 拡散 / 可視化 / 計算物理 |
研究概要 |
本研究では,一様流に対向する二次元乱流噴流による高シュミット数物質拡散場について,乱流場の瞬時構造変化に対するスカラ場の動的挙動を実験的に調べ,速度場の構造と濃度場の統計的特性との関係を明らかにし,得られた結果を基にラグランジュ手法によるモデル構築を行うことを目的とする.次の研究実績が得られた. 1. 二次元対向噴流における乱流場の構造と濃度場の統計的特性の実験的調査 前年度の実験室移動と旧水路の解体に伴い,実験用水路を新たに製作し,その流れの基本特性をまず調査した.その結果,本研究目的遂行に十分な平均流れの均一性が得られていることを確認した.この結果を受け,二次元噴流用ノズルを設計・製作し,二次元対向噴流の実験を行った.前年度に購入した高速度カメラを利用したPIV計測システムを用いて噴流速度場の測定を行い,対向二次元噴流速度場の基本情報を得るとともに.速度勾配テンソルを利用して瞬時よどみ点の抽出に成功した.しかしながら,対向一様流と噴流出口速度の速度比が大きい場合にノズル本体形状の影響と思われる流れの不均一性が現れたので,今後,この問題を解決する必要性が生じた.最終年度にノズルを改良した上で,速度・濃度同時測定を行い,乱流場の瞬時構造とスカラ場の動的挙動を調べることを目指す. 2. ラグランジュ手法によるスカラ乱流の確率論的モデル構築 前年度からの継続研究として,フリップフロップノズルによる搖動噴流の数値解析を行い,国内の学会で研究発表するとともに,国際会議に論文投稿した.今後,速度場だけでなく高シュミット数物質拡散場の数値解析をラグランジュ的手法を取り入れて行い,複雑搖動する流れ場中でのスカラ場の構造を固有直交展開法(POD)などの統計的手法を取り入れて調べる予定である.これによって得られた知見をラグランジュ的な確率モデルの構築に役立てることを目指す.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究初年度に発生した突然の実験室移動のため,実験用水路の製作と試験を今年度前半期の研究計画に組み入れざるを得ず,研究目的である対向噴流の実験に費やす時間が短縮され,後半期に集中して行わざるを得なかった.しかしながら,概要で述べたような多少の問題が残ったものの,今年度までに速度場の測定はほぼ終了しており,また,計測装置や解析法などのノウハウは既に完成し実験を遂行する上での障壁は無い.最終年度に対向噴流における速度場と濃度場の同時測定を行い,得られたデータを解析することで研究目的を十分に達成するものと期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
今年度までの2年間で,実験の遂行に必要な装置や計測システムは完成しており,最終年度においては二次元対向噴流拡散の実験を推し進めるのみである.そして,実験で得られた速度場・濃度場データを固有直交展開(POD)法を用いて解析し,乱流場の構造と濃度場の統計的特性との関係を調べる.また,高シュミット数拡散場の数値解析にはラグランジュ的手法を用いることを考えている.本計算手法は並列化が比較的容易であり,これによる計算効率の向上が期待できる.通常の並列計算に用いられるクラスタ型の計算機は大変高価であることから,本研究ではGPU(Graphics Processing Unit)を用いた並列計算を行うことを考えている.最終年度では,GPUを利用した並列化効率の高いプログラムを作成し,研究を推進する.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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