平成24年度に研究代表者らが実施した研究を拡張し,最終年度にはさらに詳細な現象解明を行った.具体的には,マイクロスケールの血管狭窄部における赤血球の挙動解析において,赤血球が受ける力を定量的に計算し,狭窄部の長さおよび大きさが挙動に与える影響について比較・検討した.その結果,平成24年度に得られた定性的な成果を,赤血球が受ける力の観点から定量的に説明することができた. 次に,狭窄部を有するダクト内における挙動解析において,赤血球の初期位置および初期角度の影響について調べた.初期位置に関しては,物体を流路の中央に配置した場合が最も物体が流れにくいという結果が得られた.また,初期角度に関しては,物体を流路に対し垂直に配置した場合が最も物体が流れにくいという結果が得られた.今後,複数個の赤血球を含む流れの挙動解析を行い,赤血球同士の凝集や狭窄部における閉塞現象の解析を行う予定であるが,最終年度に得られた成果は,これらの解析においても有益な情報になることが考えらえる. 最後に,研究期間全体を通じて得られた成果をまとめる.(1)複雑流路の基礎として,U字型曲がり管内を流れる変形する物体の混相流解析を実施し,レイノルズ数や管と粒子の直径比などのパラメータが物体の挙動に与える影響について調べた.得られた結果は,分岐や狭窄部を含む流路への拡張に向けて有益なものとなった.(2)マイクロスケールの円管内における粘弾性物体の混相流解析を行った.物体の変形度や物体に作用する力の計算を可能にし,定量的な評価を行うことができた.(3)狭窄部をもつダクトや円管内流れにおける赤血球の挙動解析を行い,狭窄部の長さやサイズが赤血球の挙動に与える影響について詳しく調べた.
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