研究課題/領域番号 |
23560194
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
石原 卓 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10262495)
|
研究分担者 |
芳松 克則 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70377802)
岡本 直也 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80547414)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 高レイノルズ数乱流 / 剪断層 / エネルギー散逸 / エネルギー輸送 |
研究概要 |
本研究の目的は,高レイノルズ数乱流特有の重要な性質のひとつと考えられる,強い管状渦が集合して形成される,非常にシャープな境界をもつ渦組織構造について,その三次元構造,空間分布や特性を理解するため,乱流の世界最大規模(格子点数4096の3乗)直接数値計算データを活用した,解析手法の開発と詳細なデータ解析を実施することである.23年度は当初の計画に基づき,渦組織構造(せん断層や渦管など)の位置と向きと大きさを組織的に抽出する手法の開発を行った.特に,渦組織構造は厚さがテーラー長の数倍,大きさが積分長のオーダー,エンストロフィーが平均の10倍程度という解析結果に基づき,テーラー長程度のスケールにおけるエンストロフィーの局所平均(粗視化)を用いて計算領域全体の解析をしたところ,その局所平均がある閾値を満たす領域のうち隣接してあるサイズ以上のクラスタを形成しているものの中に剪断層が存在することが分かった.また,渦組織構造は計算領域全体のわずか2%以下の体積であるが,全エンストロフィーの10%程度を有している.乱流場の速度微分の尖度への寄与は(体積が小さいこともあり)微小であった.しかし,剪断層を横断して大きな(速度成分のrms程度)の速度差があり,速度差の統計に大きく影響を及ぼしていることや,剪断層の空間分布がエネルギー散逸やエネルギー輸送の大域的な構造,すなわち乱流場の大規模構造を決定していること,などが示唆され,今後より詳細な解析による定量化が必要である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,格子点数4096の3乗の乱流場の膨大なデータを扱うため,組織的な解析方法が必要だが,テーラー長程度のスケールにおけるエンストロフィーの局所平均による粗視化を用いることにより,本研究で着目する剪断層の組織的な抽出が可能となった.これにより,乱流場における剪断層の分布,体積比率,全センストロフィーへ寄与等の定量的な評価が実現できた.一方,ウェーブレット変換を用いる解析手法の開発については,プログラムの実装が出来ていないが,方法論についての考察が進み,具体的な問題設定が出来たため,研究はおおむね順調に進展していると評価できる.
|
今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究により,高レイノルズ数乱流中の渦組織構造(強い剪断層)について,その性質(典型的なサイズ,内部構造,エネルギー散逸量,エネルギー輸送量等)の理解が深まった.また,強い剪断層は適当な粗視化により組織的に抽出できることが分かり,その大域的な分布が把握できた.今後は,これまでに得られた結果を一旦まとめるとともに,いくつかの渦組織構造について,条件付き統計解析を実施し,乱流場全体の統計への影響を把握する.特に,ウェーブレット変換を活用し,渦組織構造領域とそれ以外の領域に分け,各々の領域のエネルギースペクトルへの貢献の定量的な評価を試みる.また,Hunt教授(UCL)との研究打ち合わせを行い,高レイノルズ数乱流中の渦組織構造に関連した新しいデータ解析(二点統計量,高次統計量)を開始するとともに,渦組織構造の時間発展についての解析を開始する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初の研究費使用計画に基づき,次年度は情報収集および成果発表のための旅費,および,計算機使用量,論文投稿料等に研究費を用いる.なお,前年度から繰り越した経費は,共同研究者のHunt教授(UCL)が4-5月に香港に滞在する機会を利用して,香港大学にて研究打ち合わせを実施するための旅費として利用する.
|