研究課題/領域番号 |
23560194
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
石原 卓 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10262495)
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研究分担者 |
芳松 克則 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70377802)
岡本 直也 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80547414)
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キーワード | 高レイノルズ数乱流 / 剪断層 / エネルギー散逸 / エネルギー輸送 / 渦構造 / 動力学 |
研究概要 |
本研究の目的は,高レイノルズ数乱流特有の重要な性質のひとつと考えられる,強い管状渦が集合して形成される渦の組織構造(剪断層)について,乱流の世界最大規模(格子点数4096の3乗)直接数値計算データを活用した解析手法の開発と詳細なデータ解析を実施し,その三次元的構造や空間分布および特性と役割を理解することである.平成24年度はこれまでに得られた結果をまとめたほか,新たな解析と可視化により以下の知見を得た.(1)多くの強い渦組織構造は,厚さがテイラー長程度,大きさが積分長程度の層状構造を持ち,互いの間隔は積分長程度である.(2)層状の強い渦組織構造(剪断層)は,太さがコルモゴロフ長ηの10倍程度の強い渦管が12η程度の間隔で密集して構成され,組織的にシャープな界面を形成している.(3)強い渦組織構造の中にはわずか10η程度の距離にrms速度程度の速度差を形成する非常に強い渦管が存在する.(4)シャープな界面をもつ剪断層の外側と内部の速度変動の2点相関が界面近傍で急激に小さくなる.また,大小様々なスケールにおけるエネルギー輸送の解析により,(5)強い散逸(平均の10倍程度)が起きている強い剪断層の内部では,それと同程度の大きさのエネルギー順カスケードが平均的に起きているが,層の厚さより大きい長さスケールにおけるエネルギー輸送は小さく,層の外部から内部にエネルギーの流入があることが示唆された. 上記のほか,平成24年度はフリーソフト(paraview)を用いて高レイノルズ数乱流中の強い剪断層を対話的に解析する手法を開発した.また,強い剪断層の時間発展を解析するためのデータベースを構築した.さらに乱流境界層の乱流・非乱流界面近傍での条件付き統計解析を行い,乱流境界層の乱流・非乱流界面においても速度の2点相関が急激に小さくなることを示し,速度変動をブロックする役割があることを実証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
テイラー長程度のスケールにおけるエンストロフィーの局所平均による粗視化を用いることにより,高レイノルズ数乱流中の強い渦組織構造(剪断層)の3次元的な構造と分布に関する新たな知見を得ることが出来た.また,大規模データの解析と対話的な可視化により,剪断層の詳細な内部渦構造の理解とその定量的な特徴付けが進んだほか,剪断層近傍の様々なスケールにおけるエネルギー輸送の特性についても新しい知見を得ることが出来た.ウェーブレット変換を用いた解析手法の開発は進んでいないが,一方で,新しいソフトウェア(paraview)の導入により,対話的に解析結果を可視化することが可能になったほか,時系列の解析のための準備も順調に実施できている.また,非一様性乱流場(乱流境界層)における乱流・非乱流界面との関連性も明らかになりつつあり,研究は順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
平成23,24年度の研究により,高レイノルズ数乱流中の渦組織構造(強い剪断層)について,その性質(典型的なサイズ,内部構造,エネルギー散逸量,エネルギー輸送量等)のほか,空間における大域的な分布についての理解が深まった.平成24年度は得られた成果を論文としてまとめ,投稿できる形にした.平成25年度は,剪断層近傍の条件付きの二点統計量と高次統計量についての解析を進めるほか,平成24年度に構築した,高レイノルズ数乱流の大規模時系列データベースを用いて,剪断層の時間発展についての解析を進め,剪断層の「役割」についての新たな知見を得ることを目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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