研究課題/領域番号 |
23560195
|
研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
岩田 修一 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00293738)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 非ニュートン流 / 粘弾性流体 / 流動複屈折 / 伸長粘度 |
研究概要 |
本研究では、圧力振動場での気泡近傍の流れや2気泡間の流体力学的な相互作用が気泡上昇速度を促進させるメカニズムについて、流動複屈折現象を利用し、弾性応力が果たす役割を解明する。 初年度は、回転円筒型圧力振動発生装置の設計ならびに製作を実施した。圧力振動を生み出す加圧・減圧機構と、円筒内部での気泡の上昇を抑制するための回転機構を兼ね備えた装置である。回転円筒の両端にはゴム膜が取付けられており、2台の振動発生器に取付けられた金属棒が、両端のゴム膜にそれぞれ接触することにより圧力振動が印加される。これによる円筒位置のずれが生じたことから、円筒の両端を3方向よりプーリーで固定することにより位置のずれを防止する事に成功した。また、金属棒の先端形状を球形に加工し、安定した円筒回転が得られた。石英円筒管の加工について説明する。市販の引き抜き加工による石英管を用いると、肉厚分布や偏芯によってレーザー光路長がわずかに変化し、レーザー光の積分値情報として得られる流動複屈折の測定値への影響が大きいことが分かった。そのため、石英管の内円筒と外円筒の研削加工を行うことにより寸法精度を確保することができた。 強い流動複屈折を示すCTAB-NaSal水溶液を円筒管に満たし、容器内に2つの気泡を設置し、静止圧力場にて20rpmの回転を与えた。初めは、中心軸上から外れた気泡は徐々に移動し、当初の目標である円筒中心軸上での固定が可能であることが示された。また、両端に取付けられた振動発生器に同期運転をさせるため、ファンクションジェネレーターの信号を用いてそれぞれの振動発生装置を制御する機構を作り、回転円筒容器内部に圧力振動を安定して印加することが可能となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画は、回転円筒型圧力振動発生装置の設計ならびに製作を実施することであり、研究実績の概要で記したように、計画通り完了した。なお、23年度の計画では、英弘精機が所有するHaake社製CaBER伸長粘度計による伸長粘度の依頼測定を予定していた。計画通り英弘精機に依頼測定を行ったが、昨年、英弘精機の伸長粘度計に重大な故障が生じ、伸長粘度を測定できなかった。今後、英弘精機は故障機器を修理する予定はなく、代替品の導入の予定がないことを担当者に確認した。依頼測定サービスは中止されるとのことである。連携研究者が開発中の伸長粘度の測定方法を利用することや、他者研究者による文献データを代替のデータとして利用することを検討したい。
|
今後の研究の推進方策 |
完成した回転円筒型圧力振動発生装置を用い、圧力振動場における気泡の膨張収縮による気泡近傍ならびに気泡間の流動複屈折データの蓄積を引き続き実施する。気泡間距離、周波数気泡サイズを系統的に変化させながら、データを蓄積し整理する。成果の一部は、レオロジー国際会議(ICR2012)にて発表する。また、円筒壁面が測定値に及ぼす影響を評価するために,測定の円筒ガラス管の内径を変更してデータ蓄積を行い、整理する。また、蓄積したデータを整理し、伸長粘度に関する検討を実施する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究費の主な使途は、消耗品と旅費である。主な消耗品の使用計画について簡単に説明する。金属加工は、回転円筒型圧力振動発生装置に照射するレーザー固定治具の製作等に用いられる。円筒型石英セルは、石英ガラス製回転円筒の材料費+加工費である。Adobe CS5(画像処理ソフト)は、気泡間距離、気泡径の測定のための動画処理に用いられる。その他、薬品などの消耗品が計上されている。次に、主な旅費として、外国旅費については、ポルトガルにて開催されるICR2012の旅費、参加費に用いられる。その他、国内学会発表ならびに粘度測定、論文発表に関する経費が計上されている。
|