本研究では、圧力振動場での気泡近傍の流れや2気泡間の流体力学的な相互作用が気泡上昇速度を促進させるメカニズムについて、流動複屈折現象を利用し、弾性応力が果たす役割を解明する。平成25年度は、フォトロン(株)より2次元偏光計測できる偏光高速度カメラを借用し、気泡間距離、周波数、気泡サイズを系統的に変化させながら、流動複屈折に関連した遅延分布についてデータ蓄積と整理を行った。CTAB/NaSal水溶液で満たされた光学セルに2~4マイクロリットルの気泡を1個設置し、鉛直方向下側より200Hzの圧力振動を印加した場合における気泡近傍の遅延分布を毎秒4000~6000コマで撮影することに成功した。気泡収縮時には気泡下部に強い遅延、すなわち弾性応力が出現し、逆に気泡膨張時には気泡下部の強い遅延は急速に消滅すると同時に気泡表面近傍に遅延が出現し、圧力振動の印加によって、気泡近傍の応力は複雑な挙動を示すことが明らかになった。これは、収縮時にNegative Wakeが極めて短時間に気泡下部で形成され、膨張時に消滅したことが考察される。 また、試料溶液で満たされた回転円筒型流路に2気泡を設置し、片側から圧力振動を印加し、重力の影響を排除した環境で2気泡の挙動を検討したところ、2気泡は接近し、気泡間の流体力学的な作用の関与が明らかになった。光学セルに設置された圧力振動場における2気泡近傍の遅延分布の測定では、それぞれ前述の単一気泡で生じた遅延パターンが出現することに加え、気泡収縮時には、2気泡間距離の増大により、気泡間には100s-1オーダーの大きな伸長速度場が形成され、気泡間に強い遅延が現れた。これは、気泡の収縮に伴う流体力学的な作用により、強い弾性応力が気泡間に出現し、気泡同士の接近を促進したことが考えられる。本知見は、Y字分岐を有する流通系に圧力振動を印加する気液分離方法に応用された。
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