研究課題/領域番号 |
23560201
|
研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
渡辺 敬三 首都大学東京, 理工学研究科, 名誉教授 (20072134)
|
研究分担者 |
小方 聡 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (50315751)
|
キーワード | 機械工学 / 流体工学 / 抵抗減少効果 / バイオ繊維懸濁液 / 円管内流れ |
研究概要 |
液体の流動における乱流抵抗の低減化は流体輸送動力の減少に直接結びつく故に、工業的には省エネルギーの観点から注目されている。低減化の手法は流体中に抵抗減少剤を添加・混入するか乱流制御による方法が考えられるが、前者の受動的な方法は簡便でその低減量が大きいことから高分子や界面活性剤などに関して従来から多くの研究がなされている。しかしながら、これらの添加剤は溶液の劣化や廃棄に伴う環境負荷への影響が無視できず、その応用が限定される。本研究はこのような抵抗減少剤の短所を改善すべく、バイオ繊維に注目してその懸濁液の抵抗減少効果を明らかにするものである。 今年度は供試バイオ繊維として、絹糸、綿糸、麻糸の三種類をl/dが13~50、これらの懸濁液濃度は250~2000ppmの範囲において管路の圧力損失を測定し、その抵抗低減率が最大約20%示すことを明らかにした。さらに、管摩擦係数のレイノルズ数に対する変化は単相のニユートン流体と比較して乱流域でほぼ平行に低減することを明らかにした。この結果は、供試バイオ繊維懸濁液の抵抗減少効果はバイオポリマー水溶液の挙動であるType-Bに属するものであることが明らかにされ、抵抗減少効果のメカニズムである混入された繊維の乱れの緩和に及ぼす影響を考える上での研究成果の一つと言える。本研究成果の一部は2013年9月8日~11日に開催される日本機械学会 2013年度年次大会(於岡山大学)における「複雑流体の流動現象」のオーガナイズトセッションで講演発表される予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
三種類の供試バイオ繊維および懸濁液濃度範囲を対象とした実験を実施し、当初予測した供試縣濁液の抵抗減少効果を実証したこと、その抵抗減少効果がバイオポリマー水溶液と類似なType-Bであることなどを明らかにしたことは今年度の研究計画を80%達成したと言える。一方、供試バイオ繊維のl/dの影響を明らかにするための試料作製に関しては繊維の切断方法が難しく、一定のl/dに揃えるところまで至っておらず、その抵抗減少効果に及ぼす影響は十分明らかにされたとは言い難い。また、流動状態における繊維の絡み合いを含めて流れの可視化法に関してもその実験方法を模索している段階であり、その達成度は低いと言わざるをえない。
|
今後の研究の推進方策 |
三種類のバイオ繊維である、絹糸、麻糸、綿糸の懸濁液で抵抗減少効果を生ずることが定量的に明らかにされたので、今後は以下の点について研究を進めたいと考えている。 (1)抵抗減少効果に及ぼすバイオ繊維の物性およびl/dの影響:繊維の剛性を把握するために物性値として引っ張り試験を予定してそれらの機械的な物性値を求める。さらにそれら繊維の形状寸法の測定を行う。また繊維諸元であるl/dを一定にする切断方法に関しても色々試みる予定である。これら物性値と抵抗減少量の相関を実験的に明らかにする。 (2)繊維の絡み合いの定量的な評価:抵抗減少効果が生ずる原因として、流動時の繊維の絡み合いが乱れの緩和に影響を与えていることが考えられる。それゆえ、繊維の絡み合いを定量的に評価しその影響を調べることは重要である。現段階では管出口で採取した縣濁液の顕微鏡写真から数値化することを考えている。 (3)流れの可視化:流動時の管内の繊維挙動を明らかにするため流れの可視化を試みる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年度は最終年度であり、研究費は500千円が予定されている。前年度までにバイオ繊維懸濁液の抵抗減少効果を実験的に明らかにすることが出来たので、それらの研究成果を国内外に研究発表するための学会出席旅費として400千円、実験関連費用を含めて残りの100千円を使用する計画である。
|