研究課題/領域番号 |
23560204
|
研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
宮里 義昭 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (30253537)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | シュリーレン法 / 超音速噴流 / 衝撃波 / 計測法 |
研究概要 |
超音速流れの研究は,工学的及び学問的に非常に重要である.一般に,超音速流れの特性を理解するには,流れ場のベクトル量(例えば,速度)やスカラー量(例えば,密度,温度,圧力)の情報が必要とされる.このような情報は,衝撃波とせん断層あるいは衝撃波と境界層の干渉を考慮して,数値計算によって得られることもあるが,数値計算の妥当性は,信頼のおける実験値との比較によってなされる.本研究では,非接触測定法であるレインボーシュリーレン偏向法を衝撃波と膨張波や圧縮波を含む複雑な超音速流れに適用し,超音速流れの非接触定量的可視化法を確立することを目的とする.本研究によって得られた主な成果は以下のとおりである. 不足膨張音速噴流の構造を連続的な色相分布によって定量化できる.この色相値のアーベル逆変換によって噴流軸に対して任意の断面の密度分布が得られる.すなわち,衝撃波と膨張波や圧縮波を含む複雑な超音速流れを容易に定量観察することができる.また,レインボーシュリーレン法によって得られた噴流中のマッハディスク前後の密度比はランキン・ユゴニオによる垂直衝撃波前後の理論値と定量的に非常に良く一致する.さらに,実験と同一の境界条件,作動条件で適切な乱流モデルを用いた数値解析を行い,本実験結果と比較検討した.その結果,レインボーシュリーレン偏向法によって得られる噴流内のマッハディスク前後の密度比や噴流中心軸上の密度値の変化は数値計算結果と定量的に比較的良く一致することがわかった.なお,本実験のレインボーシュリーレン偏向法の空間分解能は約20ミクロンである.この分解能は,ピンホールの大きさ,集光レンズの焦点距離,レインボーフィルターの色相の解像度,デジタルカメラの解像度に依存する.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は,まず初めにレインボーフィルターの設計・製作を予定通り行った.本研究で使用するレインボーフィルターの作製は,市販の画像解析ソフト(Adobe社製の画像解析ソフトPhotoshop)によって行った.レインボーフィルターは,色相の範囲を0度から350度とし,これをスライド用のポジフィルムにプリントして作製した.つぎに出口直径10 mmでノズル入口から出口までのノズル壁を曲率半径20 mmの円弧とした設計マッハ数1.0の先細ノズルを設計・製作した.先細ノズルと既存の設計マッハ数が1.6の超音速ノズルを既存の超音速風洞に取り付けて使用した. 圧縮機によって高圧タンクに蓄えられた乾燥空気は,電磁式圧力制御弁を通過して,集合洞で一旦よどみ状態になった後,供試ノズルを通して大気に放出させた.出力500Wのメタルハライド光源からの光は,直径10mmの光ファイバーケーブル,焦点距離16.56mmの対物レンズ,直径50ミクロンの精密ピンホールを通った後,コリメータレンズ(直径100mm,焦点距離500mm)で平行光線となり,集光レンズ(直径100mm,焦点距離500mm),レインボーフィルター,カメラレンズを通してデジタルカメラの受光素子上にに達するように設計を行った. 平成23年度は,設計マッハ数1.0の先細ノズルを用いて,噴流中にマッハディスクを伴う場合の流れ場をレインボーシュリーレン偏向法によって測定し,噴流軸に対して任意の断面の密度値を得た.また,先細ノズルからの流れを適切な圧縮性の乱流モデルを用いた数値計算を行い,レインボーシュリーレン偏向法による密度測定の妥当性を検討した.以上の研究成果を国内の可視化情報学会と国外のアメリカ航空宇宙学会で講演発表した.
|
今後の研究の推進方策 |
今後はまず初めに小さな出口断面積をもつノズルからの噴流と狭い流路内の超音速流れをレインボーシュリーレン偏向法によって定量化することを行う.まず初めに直径2.0mmで長さ25mmの断面積の小さなストレートノズルを作製する.ノズルの入口部は急縮小にし,ノズル内で縮流により幾何学的なスロートができるような構造にする.この供試ノズルを既存の大気吹出し式超音速風洞に設置し,風洞圧力比(ノズル上流のよどみ圧力と大気圧の比)を2.0~5.0の範囲で一定値にし,そのときの噴流構造をレインボーシュリーレン偏向法によって詳細に明らかにする.上述したノズルは円形断面をもつため内部を可視化することは困難である.したがって,高さ2mm,奥行き10mm,長さ25mmの二次元ダクトを設計・作製する.二次元ダクトの側壁は光学ガラスとし,内部を可視化できるようにする.この二次元ダクトを上述の超音速風洞に設置し,狭い流路内で縮流により生じる衝撃波と膨張波や圧縮波を含む複雑な超音速管内流れをレインボーシュリーレン偏向法によって可視化観察し定量化する.さらに,設計マッハ数2.0の軸対称超音速ノズルを特性曲線法によって設計・製作し,このノズルからの過膨張噴流をレインボーシュリーレン法によって定量的に明らかにする. つぎに実験と同じ条件で適切な乱流モデルを用いた数値計算を行う.実験と数値計算との比較により,レインボーシュリーレン法を内部流れと外部流れに適用した際の,空間分解能や密度の精度を定量的に明らかにする.得られた研究成果は,国内の可視化情報学会と毎年1月にアメリカ合衆国で開催されるアメリカ航空宇宙学会で発表する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は,ノズル入口で急縮小部をもち,流路の直径が2mmで長さ25mmのストレートノズルを設計・製作するための消耗品費がまず必要となる.また,高さ2mmで奥行10mm,長さ25mmの二次元ダクトを設計・作製するための消耗品費とダクト側壁に使用する光学ガラスが必要となる.また,レインボーシュリーレン偏向法によって得られた色相値から密度値に容易に変換することができる画像解析ソフトと,噴流の挙動と風洞圧力比の値を同時に記録するためことができるスーパーインポーズ機能のあるインターフェースが必要となる.さらに,研究成果を国内と国外の学会で発表する際の旅費と登録料がぜひ必要となる.
|