研究課題/領域番号 |
23560207
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
江尻 英治 千葉工業大学, 工学部, 教授 (40333017)
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キーワード | 新型燃料電池開発 |
研究概要 |
予備的な検討を行った結果,当初計画していた発電メカニズム解明のための二酸化炭素気泡のボイド率測定やメタノール濃度分布計測は技術的難度が高すぎることが判明したため,平成25年度には実施しなかった.これらの計測にはマイクロスケールの高価な計測器を必要とするからである.その代わりに,もっぱら電池の基本性能向上のアイテムを抽出する作業を行った. その結果,層流燃料電池(LFFC)の発電性能に関係する要素として8つのアイテムを抽出することができた.それらは,A:大幅な性能向上が見込めるもの,B:多少の性能向上が見込めるもの,C:性能にはあまり影響しないもの,の3つのグループに分類することができる. Aグループには4つのアイテムがあり,列挙すると,①溶液のイオン伝導率を高くすること,②燃料電池の発電性能は,燃料濃度よりも酸化剤濃度,つまりアノードよりもカソードでの反応に大きく左右されるため,より強力な酸化剤を使用すること,③運転温度を高くすること,④電極間の距離を近くすること,である. Bグループには3つのアイテムがあり,列挙すると,①単位面積あたりの性能を向上させるために,電極の長さを燃料の流れ方向により短くすること,②支持電解質として硫酸を使用する場合には,10wt%の濃度が最適であること,③メタノールの濃度をより高くすること,である. Cグループとしては,燃料の供給量は,流れの区分化が保てる範囲であれば低流量でかまわないということである.これは性能向上には寄与しないが,燃料を節約できるという意味で効率向上が見込めるアイテムである. 以上の知見より,基礎研究の段階は終了し,今後はこれらのアイテムを適宜組み合わせて最適化を図る応用研究の段階に入ったと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画との間にズレが発生しているが,応用研究という見方をすれば研究目的に対し一定の成果が得られていると考えられる.電池の基本性能向上のアイテムを抽出する作業を行っており,これらの組み合わせで最適化を図ることによって,層流燃料電池の早期の実用化が可能である.
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今後の研究の推進方策 |
層流燃料電池(LFFC)の発電性能に関係する要素の中で,大幅な性能向上が見込める二つのアイテムに対し,さらに突っ込んだ実験解析を行う.具体的には,詳細な電気化学メカニズム解明を行うため,マイクロサイズの燃料電池に特化した内部インピーダンス計測を行う. 現在までに学会発表は国内(日本機械学会年次大会)でしか行っていないので,10月開催予定のECS(米国電気化学会)講演会で国際的に成果を発表する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は,予備的な検討の結果,当初計画していた発電メカニズム解明のための二酸化炭素気泡のボイド率計測やメタノール濃度分布計測は技術的難度が高すぎることが判明し実施しなかった.その代わりに,もっぱら電池の基本性能向上のアイテムを抽出する作業を行った.そのため,燃料電池の部品や材料の購入費用のみ発生し,計測装置の購入の必要がなかった. 平成25年度に明らかになった基本性能向上アイテム中で,特に効果が大であるものをさらに絞り込み,それらについて詳細な電気化学メカニズム解明のための実験を行う.特にマイクロサイズの燃料電池に特化した内部インピーダンス計測ができる装置を購入するために使用する.また,10月に開催予定のECS(米国電気化学会)講演会にて成果を論文発表するための旅費として使用する.
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