最終年度においては,前年度までに得られた成果を基に,層流燃料電池のさらなる基本性能向上を行い,実用化に近づけるための研究を実施した.具体的には,酸化剤として溶存酸素だけを使うのではなく,(1)大気から直接酸素を取り込むこと,(2)マイクロバブルを混入した溶液を使うこと,の2点に項目を絞った.(1)については,動作する電流密度範囲が飛躍的に拡大し,オーム損失の顕著な低減効果が得られた.(2)については,大きな効果は得られなかったものの,バブル径をナノサイズにすることによってさらなる効果の増大が期待できることがわかった. 研究全体を通した成果の一つ目として,電極間距離,電極長さ及び幅をパラメータとして実験解析によって,層流燃料電池の基本的構造,寸法が発電性能へ及ぼす影響を明らかにしたことである.二つ目として,運転温度,燃料の濃度や流速,酸化剤の濃度や流速などの運転条件による発電性能への影響が明らかになったことである.三つ目として,内部流れの可視化によって,燃料と酸化剤の区分化の重要性,燃料極から発生する二酸化炭素気泡の影響など,発電メカニズムが流体現象の切り口で把握できたことである.最終的に層流燃料電池は,起電力,電流密度などからいって,直接メタノール燃料電池と同等の性能ポテンシャルを持つことが実験的に明らかになった. 残された課題としては,マルチフィジックスシミュレーション等を用いてさらなる発電メカニズムを解明することであり,このような基礎研究によってさらなる性能向上が期待できる.
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