研究課題/領域番号 |
23560209
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
小林 宏充 慶應義塾大学, 法学部, 教授 (60317336)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 数値流体力学 / 乱流 / 電磁流体 / LES / 渦電流 / 壁面ジェット流 |
研究概要 |
本研究で対象とする液体金属MHD発電機は、矩形ダクト内に液体金属を流して磁場を印可し、発生した起電力を壁面に配した電極から外へ電力として取り出すシステムで、流体エネルギーを直接電気に変換する。正方断面を有する発電機において、磁束密度の強さが発電機内の乱流現象に与える影響を、ラージエディシミュレーション(LES)を用いて検討した。 磁場は発電を行う電極間には一様に印可されるが、流れ方向に有限長さの磁石によって生成されるので、その発電領域の前後では磁場の流れ方向変化により渦電流が発生する。その渦電流によるローレンツ力は流れに垂直に働くので、流れは磁場に垂直な平面内でM字形の速度分布にゆがめられ、側壁ジェット流を形成する。その側壁ジェットの最大速度は、磁束密度に比例するハルトマン数の0.5乗に比例して増加し、壁面からジェットの最大速度までの距離である側壁ジェットの厚さはハルトマン層の0.5乗分の1で薄くなることが分かった。 磁束密度を増加させると流れ方向に伸長した発電機内の乱流構造は抑制され、このときの断面内にできる渦状の2次流れは磁場に垂直な壁面側の構造が抑制・消失することが分かった。さらに磁場を増加させ発電領域でレイノルズせん断応力がゼロになるまで乱流が抑制される条件では、乱流構造は磁場の方向に揃い、カルマン渦のように繰り返し下流へ流され、渦状の2次流れは断面内で消失することが分かった。さらに磁場を増加させると側壁ジェットの局所摩擦レイノルズ数が増加し、側壁ジェット流が乱流遷移することが分かった。実験で未解明だった乱流強度の増加の原因が判明し、その平均速度分布は実験結果と良く一致した。このときの断面内の2次流れは側壁側の渦状構造が抑制されて磁場に垂直な壁面側に現れることが分かった。一方で、細かな乱流構造は側壁側に存在し、その乱流構造は再び流れ方向に伸長されることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は、磁束密度の強さにより発電機内の乱流現象への影響を調べることを目標としたが、低レイノルズ数流れにおいて、その目標は達成された。さらに、接続する負荷抵抗の違いによる乱流現象や発電性能への影響の検討も始まっており、次年度の目標であった電極の有無による流れ場への影響の検討も実施中である。
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今後の研究の推進方策 |
接続する負荷抵抗の違いによる乱流現象や発電性能への影響の検討を進め、電極の有無による流れ場への影響の検討を実施していく。また、より高いレイノルズ数でのLESや直接計算による検討のためには、計算の高速化が必須であり、そのためにグラフィックス用の演算器(GPU)を用いた計算プログラの実行をテスト中である。また、大規模計算のためにMPIを用いた並列化も同時に行っていく。そのために、新たなLinuxサーバーを購入し、より数値計算を推進する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度得られた結果を計算力学分野で有名なWorld Congress on Computational Mechanics、および乱流分野で有名なTurbulence, Heat and Mass Transferといった国際会議で成果を発表し、著名な研究者と情報交換・議論を行い、さらに今後の研究推進に役立てる。また、Linuxサーバーを購入して、数値計算を効率的に実施する予定である。
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