研究課題/領域番号 |
23560211
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研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
江上 泰広 愛知工業大学, 工学部, 准教授 (80292283)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 感圧塗料 / 感温塗料 / 複合センサ / 分子イメージング / 非定常流れ / 同時計測 / 光学計測 |
研究概要 |
陽極酸化被膜型感圧センサは,光学的に非接触・非侵襲に模型表面の数kHzの非定常圧力変動を2次元の面計測することができる高速応答の機能性分子イメージングセンサであるが,温度依存性による誤差を補正する必要がある.しかし従来の方法で感温センサを複合化すると,センサ分子間で干渉を起こし劣化してしまう.本研究ではこの陽極酸化被膜に感圧・感温の機能性分子をインクジェットプリンタの技術を応用して微細なマイクロドット配列に物理的に塗り分けることにより,分子間干渉を生じさせず,様々なセンサ分子を自由に複合化できる理想的な高速応答複合センサを作成し,非定常現象の多変量同時計測を高い精度で実現することを目的としている.H22年度は金属基盤の陽極酸化被膜上でのサンプル作成の一段階手前として,TLCプレート上でインクジェットを用いた複合センサを作成した.感圧色素と感温色素はそれぞれに適した溶媒にビーカーで溶かされ,インクジェットを用いて基盤に塗布された.現状ではドット間隔は0.6mmとなっており,PSPとTSPが重ならずにマイクロドット配列に塗布することができた.作成された複合センサの校正試験を行った結果,それぞれの色素単体でセンサを作成した場合とほぼ同じ圧力/温度感度が得られた.また,単純混合の複合センサでみられる色素間の干渉による著しい劣化も見られず,分離式複合センサの利点が確認された.また,並行して共鳴管式の高速応答試験装置を作成して,その特性試験を行った.この装置により作り出された正弦波の圧力変動と,PSPからの発光強度の変動を対比することで,PSPの位相遅れと振幅の変化を測定できることを確かめた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TLCプレートを用いた複合センサの作成及びその定常的な特性評価のための,校正試験は順調に進んでいる.また陽極酸化被膜を用いた複合センサの作成は現在進行中である.また高速応答性を評価する装置の設計・製作も終了し,通常のポリマーベースとTLCベースのPSPを用いた装置の特性評価も行い,陽極酸化被膜の複合センサの評価も行う準備が整っている.震災により,実験装置の入手が予定よりも遅くなったが,他の部分を先回りして進めることで,遅れはほぼ取り戻すことができた.よって,研究はおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
H23年度に引き続き,陽極酸化被膜にマイクロドットパターンに感圧塗料(PSP)と感温塗料(TSP)を塗り分けた新型複合センサの作成条件(色素の種類,色素溶液の濃度,塗布回数,ドット径,塗布パターン)の最適化を行う.また,チャンバ内の圧力と温度を変化させることができる校正試験装置を用いて,作成した複合センサの定常的な感度特性の評価を行い,PSP, TSP単体のものや混合型複合センサのものと比較を行う.また,H23年度に作成した共鳴管をベースにした時間応答性評価装置を用いて複合センサの時間応答特性を評価する.また,複合センサの実証試験を行うための装置の設計,製作を行う.H25年度はH24年度に作成した実証試験装置を用いて温度と圧力が時間変化する非定常流れ場に複合センサを適用した試験を行う.圧力と温度の同時計測を行い,その測定精度や時間応答性,温度補正の評価を行う.また,数値解析を行いその結果との比較も行う.また,実際に試験を行った結果より,センサ特性の時間安定性など実際の試験に使用した場合の問題点を調査し,実用レベルの多変量の非定常計測が行えるようにセンサの改善を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
複合センサの作成用の消耗品費として複合センサの蛍光色素や溶媒などの試薬の購入に200千円,薬品調合用のガラス機器に10万円,光測定用の光学フィルターの購入に100千円,校正試験装置の流路配管に200千円を計上している.また,H24-H25年度に行う実証試験に用いる衝突噴流実験用ステージの設計,作成に400千円を計上した.旅費として調査研究旅費,成果発表旅費の合計35万円,研究成果投稿料として10万円を計上している.
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