研究課題/領域番号 |
23560212
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
角田 勝 近畿大学, 工学部, 教授 (60113403)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 紙・パルプ / 急拡大流路 / パルプ繊維濃度 / 分散制御 / 混相流 / 抄紙機 |
研究概要 |
製紙業界では、地球温暖化防止に関するCOP15の消費エネルギー削減目標によって、約束の2020年に向けてさらに脱水設備の小型化と省エネルギーが強く求められている。また、東日本大震災による電力消費の大幅削減の要請とも相まって、業界ではこれまでの0.5~0.8%の低濃度パルプ液から、高濃度パルプ液中でも繊維分散が可能となる抄紙機ヘッドボックスについての技術開発と、それに関わる学術的研究が一層急務となっている。そこで、本研究では報告者がこれまでに開発したパルプ繊維濃度評価技術や流れ中の繊維挙動に関する成果を発展させ、ヘッドボックス内急拡大部における流れ特性およびパルプ繊維挙動を解明して、そのフローメカニズムを用いた繊維分散の制御を図るものである。 初年度(平成23年度)は文献調査を行いつつ、実機のハイドロリック型ヘッドボックスの形状を参考に拡大率(d2/d1)が1.5~3の透明アクリル製矩形断面拡大試験流路を製作した。ついで、Csが約0.6%の比較的低濃度のパルプ液を用いて、パルプ液ダクト内流動として代表的な5つの流れ状態が上流部から拡大部に流入する場合について、急拡大後の濃度パターンに及ぼす流量の影響について基礎実験と予備的考察を行った。その結果、次のような知見が得られた。(i) 急拡大後の濃度は流速に大きく依存した分布を示して、その分布形状の流れ方向変化は3つのパターンに大別される。(ii) 低流量の場合、時間平均濃度分布Cmは中央部で高く変動分布Crmsは逆に低い。(iii) 中流量ではCmおよびCrmsとも中央部で低く壁面寄りで高くなる。(iv) 高流量ではCmは中央で膨らみCrmsは平坦な分布を示す。 以上、これらの研究成果は、当初掲げた平成23年度の目標を概ね達成している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述の「研究実績の概要」でも報告しているように、当初計画の一部条件を除いて、試験流路を製作し基礎実験を行っている。また、これらの予備的考察を含めた研究およびこれまでの準備期間における研究成果をまとめて国際会議で3件発表しており、現在までの達成度はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究成果に見られるように、急拡大流路の拡大部直後のパルプ繊維の挙動は流速に大きく依存している。したがって、繊維分散の促進とその制御を図るためには、流速に強く依存した高濃度パルプ液の特性を把握する必要がある。したがって、急拡大部でのパルプ繊維分散の様相は、流速条件とパルプ濃度の組み合わせによって異なることが予測されるようになってきた。そこで、これらのパターン化を図り、流動条件に応じた分散制御法を開発する。
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次年度の研究費の使用計画 |
供試パルプ液は近くの製紙工場から調達しているが、当工場およびその担当者が東日本大震災の対応のため、平成23年度の10月-3月の実験に提供を受けることが困難となっていた。そのため、当該パルプ液を用いた実験に使用する試験流路・装置の製作を行うことができず、その研究費が次年度使用額となっている。 また、今年度の研究成果から、高濃度パルプ液の分散制御を図るためにはさらに多種の試験流路が必要になってきており、当初予定の試験流路および実験装置製作費用に加えて、次年度使用額はその費用(消耗品費)に充当する計画である。 上記の使用計画の他に、初年度の平成23年度に行った研究成果は国内の学会に、さらには平成24年度前期の成果をも併せて国際会議での発表を次年度に予定しており、次年度(平成24年度)研究費はこれら国内旅費ならびに外国旅費と外国語論文の校閲費用(謝金等)、研究成果投稿料(その他)にも使用する計画である。
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