研究課題/領域番号 |
23560218
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
長崎 孝夫 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (30155923)
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キーワード | 吸収式ヒートポンプ / 吸収器 / 発泡金属 |
研究概要 |
昨年度に作製した実験装置を用い、まず発泡金属を拡散接合した伝熱面を用いた水蒸気の凝縮実験を行った。伝熱面上端から作動液である水を種々の流量で供給し、テストセクションに水蒸気を供給する蒸気発生器ヒーターへの投入電力を調節して系圧力を約20Torrで一定保ち、蒸気発生器からテストセクションへの蒸気流量を測定し凝縮流量を算出した。その結果、発泡金属伝熱面の凝縮熱伝達率は液流量が比較的小さい場合には平滑壁面上の膜凝縮の理論値(以下、ヌセルトの解と呼ぶ)に近い値をとるが流量増加とともにヌセルトの解より大きな値となり、液膜厚さがある程度以上では発泡金属による伝熱促進効果が顕著となることが分かった。さらに発泡金属伝熱面の蒸発熱伝達の測定も行った。この実験ではテストセクションを蒸発器として用い、別途設けた凝縮器(プレート型熱交換器)により発生した蒸気を凝縮させ、系圧力を13Torr程度とした。蒸発熱伝達率の実測値をヌセルトの解と同様な仮定に基づく理論値と比較した結果、液が小流量の時の実測値はヌセルトの解と同程度の値となり、膜凝縮の場合と同様な傾向が見られた。これらの水単成分の凝縮・蒸発実験に続き、発泡金属伝熱面によるLiBr水溶液への水蒸気吸収実験を行った。系圧力は実機の運転条件と同等の6Torrとし、溶液濃度は約56wt%、伝熱壁裏面の冷却水入口温度は20℃、溶液入口温度は飽和温度である約34℃およびそれ以下のサブクール状態として吸収実験を行った。その結果、水蒸気吸収速度は溶液入口サブクール度とともに増加すること、熱伝達係数は溶液流量とともに増加すること、また熱伝達係数はフィン付面と同程度の高い値となることが分かった。さらに疎水性メンブレンを取り付けた場合、その圧力損失のため本実験範囲では水蒸気吸収流量が20~30%低下すると考えられることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は装置の製作および多孔質膜の圧力損失特性についての実験を行い、今年度は発泡金属伝熱面の相変化伝熱性能について実験を行った。まず昨年度に続き水単成分の凝縮について実験を行い、特に凝縮液流量が大きい場合に発泡金属による伝熱促進効果が顕著となることが分かった。また発泡金属伝熱面による水単成分の蒸発について実験を行い、液流量が小さい場合でも伝熱面が薄液膜で一様に覆われた場合の高い熱伝達率が得られることが分かった。さらにLiBr水溶液への水蒸気吸収について、機械加工によるフィン付面と同程度の高い熱伝達率が得られることが分かった。以上のように発泡金属伝熱面の相変化伝熱特性について有益な知見が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書の実施計画に従い、除湿空調への応用の観点から気相が湿り空気の場合の水蒸気吸収実験を行うとともに、本提案の吸収器を自動車排熱利用および除湿空調に適用した場合の必要伝熱面積等についての検討を行う。また今年度行った水単成分の凝縮・蒸発およびLiBr水溶液への水蒸気吸収について追試および異なる条件での実験を行い、信頼性を向上させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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