本年度は本研究で用いた発泡金属の基本的な流動・伝熱特性を明確にするため、水を作動流体として発泡金属流路の単相強制対流熱伝達率と圧力損失の測定を行った。発泡金属の片面は伝熱面と拡散接合されており、もう一方の面は断熱壁として流路を形成し、流路入口と出口の作動流体の温度差と流量から伝熱量と熱伝達率を算出した。発泡金属の厚さ(すなわち流路高さ)は1.3mm、幅は38mm、長さは70mmである。発泡金属の孔径と空隙率はそれぞれ600μmと0.94である。圧力損失の測定結果から透過率と慣性係数(流速の2乗に比例する項の係数)を算出し、球形粒子充填層に対する経験式と比較したところ、慣性係数は従来の経験式に近い値であるが透過率は小さな値となることが分かった。熱伝達率の無次元量であるヌッセルト数Nuとレイノルズ数Re(いずれも発泡金属がない場合の流路の水力等価直径に基づく)の関係を調べたところ、Re数とともにNu数は増加し、Re数が約500においてNu数は約56となり、発泡金属のフィン効果が伝熱促進に有効であることが分かった。次に発泡金属伝熱面を流下するLiBr水溶液への水蒸気吸収について、発泡金属表面を疎水性メンブレン(PTFE製、気孔径1μm)で覆った場合の実験を行った。吸収液濃度は約54%、系圧力は約6Torrであり、メンブレンで覆わない場合に比べ水蒸気吸収速度が約40%低下することが分かった。さらにメンブレンの気体側を高さ1mmの流路として大気圧の湿り空気を流し、空気からの除湿について実験を行った。その結果、水蒸気吸収速度は純蒸気の場合の10%程度に低下し、空気流中の物質輸送、すなわち水蒸気の拡散抵抗が支配的となることが分かった。空気中の物質輸送のみを考えて見積もった空気流のシャーウッド数(物質伝達率の無次元量)は約3となり、層流の場合の値として概ね妥当であることが分かった。
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