研究課題/領域番号 |
23560221
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
多田 幸生 金沢大学, 機械工学系, 准教授 (20179708)
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研究分担者 |
瀧本 昭 金沢大学, 機械工学系, 教授 (20019780)
大西 元 金沢大学, 機械工学系, 助教 (80334762)
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キーワード | 凍結 / 超音波振動 / 過冷却 / 氷晶形成 / 食品 |
研究概要 |
コールドチェーンの発達に伴って食品を安全かつ美味しく凍結保存する技術の確立が求められている.凍結保存は原理的には,低温化と活性水分の低減により生化学反応の抑制を図るものであるが,凍結の過程で細胞レベルのミクロ現象が生じ,これが各種の凍結損傷に繋がる.したがって,食品の品質を劣化させない効果的な凍結技術の開発が課題となる.本研究では,超音波振動を利用した凍結過程における氷晶形成の能動的制御を追究する.すなわち,超音波の付与によるミクロな振動および超音波キャビテーションを利用して,細胞内外の氷結晶の微細化と氷核生成数の増進を図り,それによる高品質な凍結を実現する冷却技術の開発を目標とする. 本年度は,昨年度の結果をもとに,食品の主構成要素である水の過冷却促進を実現するための操作条件を,(1)超音波振動の付与,(2)変動磁場の付与,(3)超音波振動と変動磁場の併用の3つの方法について実験的に検討を進めた.また,超音波振動が水の過冷却に及ぼす影響を理論的に検討する基礎として,TIP6P水分子モデルを用いた氷晶成長の分子動力学シュミレーションを実施し,そのメカニズムについて理論的追究を進めた.その結果,(1)振幅を一定周期で変化させる超音波振動を付与すると,弱い過冷却の促進効果が見られた.(2)超音波振動と変動磁場を組み合わせると,低過冷却度での核生成は少なくなり,若干ではあるが平均過冷却度が増加する傾向が見出された.しかし,実験回数は十分ではなく,今後も実験を継続し慎重に効果を検討する必要がある.(3) 氷晶成長の分子動力学シュミレーションの結果,交番電場による微小攪乱を水に与えると,氷晶成長が一次的に遅れる場合があることが見出された.水素結合ネットワークが攪乱される結果,氷晶界面への水分子の取り込み過程であるカイネティクスが変化するためと予想されるが,今後も検討を継続する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画した (1)実験装置の製作,(2)超音波振動を付与した水の凍結実験,(3)氷の結晶成長の分子動力学シミュレーションモデルの構築は予定どおり実施された.その結果,振幅変調超音波振動を付与すると弱い過冷却の促進効果が見られたことは望ましい結果である.しかし,超音波出力の増加に対して極大値を示す傾向が現れたことから大幅な過冷却促進が難しいことが予想される.このため,新たな効果を併用した協同効果の発現などの可能性についても検討を進める必要があり,その方策として超音波振動と変動磁場の併用について検討を進めた.実験回数が不足しているため,データの確かさは十分ではないものの低過冷却度での核生成の確率が低下し,過冷却促進の可能性が見出されたことは,今後の実験の方向性が得られたと言える.また,氷核成長の分子動力学シミュレーションについては,純水を対象とした計算が可能となり,水分子の水素結合ネットワークの形成や水分子の取り込みによる氷晶成長挙動の把握が可能となった.今後は、これを用いて変動する外部力に起因する微小攪乱が水分子の凍結挙動の解析を行う計画である.以上のことから,本研究はおおむね予定どおりに進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は今年度の結果をもとに,水溶液の過冷却促進を実現するための操作条件を実験的に十分な精度で追究するとともに,そのメカニズムを理論的に追究する.具体的には,(1)今年度の実験において弱い過冷却促進効果が見られた超音波振動と変動磁場を併用する方法に着目し,超音波出力,超音波振動の振幅の変調周波数,変動磁場の強度と周波数を様々に変化させた実験を行い,氷核の生成・成長の阻止に効果的な操作条件を探索する.(2)氷核形成の分子動力学シミュレーションモデルを水溶液系に拡張し,その有効性を確認する.また,そのモデルを用いて(1)で想定される外力(微小攪乱)を受けた水分子の凍結挙動について解析を進める.以上の検討結果をもとに,本手法の有効性を検証するともに,そのメカニズムを理論的に追究する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度経費のうち,59,200円の繰り越しが生じたのは,物品請求の手続きの遅れが原因である.繰り越し額は少額であり,平成25年度の研究費使用計画の大枠は当初の予定通りとなる.具体的には,データ処理用のコンピュータなどの設備備品に20万円,セラミック製圧電素子,熱電対,高純度蒸留水,装置改良ための材料費などの消耗品費に10万円,成果発表および資料収集のための国内旅費(仙台,弘前に各1回)に10万円の支出を予定している.
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