研究課題/領域番号 |
23560223
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山本 和弘 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60283488)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交流 |
研究概要 |
乱流燃焼速度は燃焼場の重要な指標の一つであり,理論的あるいは実験により検討されている.乱流燃焼場では乱れにより火炎の面積が増大し,燃焼する領域が増えることで燃焼速度が増大するが,さらに乱れを増加させると,乱流燃焼速度が線形的に増加しなくなる現象(Bending)が見られることはよく知られている.このような場合,乱れにより燃焼速度が低下し,局所的な消炎も起こっているものと思われるが,実際の乱流火炎を対象に局所の燃焼速度や火炎面積を実験により求め,乱流燃焼速度について議論した例はほとんどない.その理由として,(ア)変動している乱流火炎の局所の燃焼速度を実験により測定することが難しいこと,また,(イ)PLIF法などにより得られる火炎の画像は2次元であるため,火炎の3次元構造をもとに正確に火炎の面積を実験で求めることが現状では不可能なこと,が挙げられる.このため,乱流燃焼速度についての議論が不十分であった. そこで本研究では,旋回噴流燃焼器を用いて得られた燃焼場に2枚のレーザシートをクロスするように入射することで,水平方向と垂直方向の火炎の画像を取得し,乱流火炎の構造を調べた.また,水平断面の周方向の火炎長さを調べて火炎面積を求め,乱流燃焼速度について考察を行った.その結果,(1)当量比0.90では流速を増加させても平均の火炎半径はほとんど変化しないが,0.75の場合は流速20m/s以上で小さくなる,(2)流速を増加させると乱れにより火炎により多くの凹凸が現れるため,平均半径の円の周長に対して実際の火炎は1.1~1.7倍となる,(3)3次元の火炎面積を求めたところ,火炎面積は流速に比例して増加し,乱流燃焼速度とは異なる傾向を示す,ことが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
震災の影響により助成決定の通知が遅れ,実際の研究開始の遅延により予算の執行が多少遅れたが,実験データの取得はほぼ計画通りである.
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今後の研究の推進方策 |
一般に,自然現象の解明には,まず実験によって現象が認識され,モデルが構築される.ただし,実験データは計測技術に強く依存する.近年のレーザ計測の技術革新により,従来はほとんど計測できなかった乱流燃焼場を,高い時間・空間分解能で可視化できるようになった.これにより,「しわ状層流火炎」の領域では数多くの計測例が報告され,現象の十分な理解が得られている.しかしながら,乱れが非常に強い場合の燃焼場の検討はまだ不十分である. この理由としては,主に次の二つが考えられる.一つは,非常に強い乱れを作り出すため流速を増大させると火炎が吹き飛んでしまい,強乱流場の火炎を対象とすることができなかったためである.二つ目の理由としては,データ数の不足が挙げられる.これまでに行われた多くの研究では,火炎が特殊な燃焼器中に形成されるため,レーザを用いた計測が困難であった.また,乱れが非常に強い場合は火炎の変動が大きく,計測自体も非常に難しかった. 我々は,リング状の強制再循環流火炎をパイロット火炎とした旋回噴流燃焼器を用いることにより,流速100 m/sという極めて速い流速でも火炎を安定に形成させることに成功した.この燃焼器を用いれば,非常に乱れが強い乱流火炎を対象とすることができる.その上,火炎が図2のように燃焼器出口に形成されるためPLIF法などのようなレーザシートを用いた計測が非常に容易である. そこで今年度は,PLIFとPIVの同時測定を行い,局所消炎の領域近傍の流速を調べ,流れと火炎の相互干渉を明らかにする.燃焼速度を含む火炎の特性は,流れに大きく影響されるため,乱流火炎の構造と流れ場を同時に計測する意義は非常に大きい.これにより,消炎に密接に関係する発熱速度の変化やラジカルの生成・消滅過程が明らかすることが可能となる.
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度は実験回数が多少少なかったことから,繰越金が発生した.24年度は,繰り越した予算もフルに活用して,実験回数を増やし,計測誤差の確認とデータの信頼性を議論する.
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