本研究では,主として以下の2点を主要な研究目標としている。 1)境界層において遷移過程を模擬できるスペクトル法による直接数値シミュレーションのコードを開発する。 2)低レイノルズ数の回転チャネル乱流で見られる乱流構造の詳細を研究するとともに境界層の遷移過程にどのような貢献をしているのか明らかにする。
初年度においては,フリンジ領域を用いたスペクトル法による境界層遷移のコード作成した。二年目は,低レイノルズ数の回転チャネル乱流の乱流構造,ストリーク構造,縦渦構造について明らかにした。この結果については,Journal of Fluids Engineering誌に2015年2月に投稿している。三年目は,乱流境界層の遷移過程における,剛体回転(平均渦度と異方向)の影響について調べた。比較的大きな乱れの入り口条件で回転の影響が強く不安定で,短い層流領域で遷移する場合と,比較的小さな乱れの入り口条件で回転の影響が弱く,遷移に比較的長い助走区間を有する場合の二通りの計算を行った。この結果については,第15回国際伝熱会議にて2014年8月に発表している。最終年度の本年度については平均渦度と同方向の剛体回転の影響について調べた。この結果,剛体回転の向きが平均剪断の渦度と同方向だと系が安定化し遷移が遅れるが,遷移において重要な現象である低速ストリークの崩壊には影響が少ないことがわかった。
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