研究課題/領域番号 |
23560225
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
服部 博文 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), その他 (30467352)
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キーワード | 逆勾配拡散現象 / 乱流熱伝達 / 成層乱流 / はく離,再付着乱流 / 直接数値シミュレーション / 乱流温度混合 / 壁面熱的境界条件 |
研究概要 |
本研究は,逆勾配拡散現象が特に顕著に出現すると予測される温度安定成層や剥離・再付着を伴う乱流中において,その発生条件とメカニズムを,直接数値シミュレーション(Direct Numerical Simulation, DNS)を用いた乱流素過程を探索することにより,逆勾配拡散現象を調査,解明することにある.また,DNSから得られた結果を基に,乱流モデルを伴う大規模渦シミュレーション(Large Eddy Simulation, LES)やレイノルズ平均モデル(Reynolds Averaged Navier-Stokes Simulation, RANS)の予測性能評価も行い,次世代乱流熱伝達シミュレーション技術の確立と発展に向けてのモデリング技術の向上を図ることも行っている. 平成24年度は,先ず剥離・再付着を引起こす壁面形状上を温度成層乱流境界層が通過した場合に現れる,成層効果と壁面形状効果の2つの効果が重畳する乱流熱伝達場で,逆勾配拡散現象を含む現象解明を進めた. 次に壁面熱的境界条件が変化する乱流熱伝達場で逆勾配拡散現象の発生を確認し,この熱伝達場で理論検証されている重ね合わせの線形性理論に対し,数値解でも立証できることを初めて示した.乱流モデルの予測性能についての検証ではLESとRANSも同時に行い,DNSデータと比較することでLESとRANSの予測性能評価を行い, LESとRANSモデルはほぼ満足される予測結果であったが,さらなる精緻な予測をするためには改良が必要であることを示した. T字型流路における温度混合現象のDNSでは,低温流と高温流の混合過程を数値的に可視化することによって現象の理解を深めることができた.また,LESでは,この複雑な乱流混合場でもほぼ満足される予測値を与える事が分かったが,逆勾配拡散を含む現象の詳細な解明については今後の研究を進めていく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で現象解明対象としている乱流熱伝達場における逆勾配拡散現象について,平成24年度においては,DNSで様々な乱流熱伝達場においてその現象解明解析を行った.また,LESとRANSも同時に行い,DNSデータと比較することでLESとRANSの予測性能評価を行った.具体的には,(1)成層効果と壁面形状効果といった2つの効果が重畳する乱流場での逆勾配拡散を含めた現象解明,(2)壁面熱的境界条件が変化する乱流熱伝達場で逆勾配拡散現象の発生を確認,(3)壁面熱的境界条件が変化する乱流熱伝達場で理論検証されている重ね合わせの線形性理論に対し,数値解でも立証できることを初めて示し,(4)壁面熱的境界条件が変化する乱流熱伝達場で乱流モデルの予測性能を検証し,LESとRANSモデルはほぼ満足される予測結果であったが,さらなる精緻な予測をするためには改良が必要であることを示し,(5)T字型流路における温度混合現象のDNSで,低温流と高温流の混合過程を数値的に可視化することによって現象の理解を深め,(6)T字型流路におけるLESでは,この複雑な乱流混合場でもほぼ満足される予測値を与える事を確認した. 以上,逆勾配拡散現象とその周りの乱流熱伝達現象を詳細に解析するためデータは十分に揃い,解析も進んでいることから,研究の目的を達成するための過程は順調に進捗していると考える.また,予測モデルを用いたシミュレーションも新たに行い,より計算負荷が低く,予測性能が優れた乱流モデルの再構築への道も見えている.また,研究の発展としてシミュレーションを行った壁面の熱的境界条件が変化する乱流熱伝達場や温度混合路においても逆勾配拡散現象が発見されつつあり,研究の目的以上の成果が期待されるため,おおむね順調に進展しているとした.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は,前年度に引き続き,逆勾配拡散現象の発生条件やメカニズムを明確にすること,また乱流モデルの予測評価を行い,現象が予測可能かどうかを探ることに重点を置く. まず逆勾配拡散現象の発生条件に関して,これまでに様々な乱流熱伝達場で見いだした知見の再評価を行い,結論となるかを再検討する.具体的には,長さ,時間,速度といった様々な乱流スケールの変化,レイノルズ応力や乱流熱流束の収支の変化,乱流における不偏量解析,乱流運動と熱輸送にかかる4象限とトラジェクトリー解析,速度や温度のストリーク構造や渦構造との関連性をそれらの可視化による観察を通した解析等を行い,逆勾配拡散現象の詳細な現象解明と共に発生条件を同定する. 乱流モデルについて,本研究で算出された乱流熱伝達DNSデータを用いて,既存のRANSモデルとLESモデルの評価を引き続き行う.評価方法は,乱流熱伝達DNSデータを直接モデルに代入して評価するアプリオリ法と,評価モデルを用いてDNSと同条件の乱流熱伝達場を計算するデータ検証法の2通りを採用する.これらにより,絶対的な乱流熱伝達モデルの予測精度が明確になる.また,乱流熱伝達場の支配方程式と乱流熱伝達モデルがリンクする場合の総合的な予測精度が明確となり,現象予測数値モデルの構築の指針を得ることができるため,逆勾配拡散現象が再現できる現象予測数理モデルを再構築する. 以上の研究が順調に推移させ,逆勾配拡散現象の発生臨界無次元数やパラメーターが決定されれば,乱流熱伝達現象の制御に応用出来ると考えられる.この臨界無次元数やパラ-メーターを基とした外力を定義し,それをDNSの支配方程式へ組み込むことにより陽的に逆勾配拡散現象の発生が制御できるかを試み
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する研究費が生じた状況は,既存の計算機を使用することで予定計算量を賄うことに成功し,当初予定していたワークステーションの自作を見送ったことが直接の原因であり,予定計算量を超えた設備のために予算を使い切るという方策を採らなかったためである.この繰り越し研究費を含んだ次年度の使用計画としては,研究成果を世界へ速報できる国際会議で発表する機会を増やし,国内旅費と併せて旅費への割当てを多くした.そして,国際的な学術雑誌への投稿のために,英文校閲費を計上した.
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