当年度は研究計画に従って,リアルタイム微量反応中間体検出装置の改良および大規模詳細反応機構の検証に関する実験研究を行った. 前年度までに構築された微量反応中間体検出装置については,高圧の吹き出し口から微量中間体を検出するためのチャンバ改良,および動作試験を行った.また,炭化水素類から生成する微量中間体に関して定量性のある検出がなされているか確認するため,多環芳香族炭化水素類の生成反応モデルを用いて実験値との比較検討を行った.その結果,温度変化に対応する相対変化がモデルによる予測と概ね対応し,定量的な評価を行えることがわかった. 昨年度までに開発済みの往復ピストン圧縮型反応器を用い,各種条件のもとでの着火燃焼・着火限界特性の試験およびサンプリングを行った.ある程度研究が進んでいる,ガソリン類似燃料としてのヘプタンに対し,自着火性を減少させる添加剤としてのイソオクタンおよびトルエンの添加効果を検証し,モデル計算と比較検討を行った.その結果,往復ピストン圧縮型反応器においても冷炎現象ならびに熱炎の発生が確認され,また,自着火性の劣る燃料の添加により熱炎の発生が遅れ,あるいは失火に至ることが確認できた.この現象に対し,適切なタイミングでガスサンプリングを行い,微量中間体の検出を行えることがわかった. 以上のように本研究では,エンジン燃焼条件に近い高温高圧条件における,リアルタイム微量反応中間体検出装置を構築した.また,微量中間体の定量的検出の可能性について追究し,良好な結果を得た.本研究の成果は,今後期待される排出ガスの超クリーン化や燃焼条件の拡大へ向けた技術開発のための基礎的知見として重要となるものと考えられる.
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