研究課題/領域番号 |
23560229
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
武石 賢一郎 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70379113)
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研究分担者 |
小宮山 正治 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40178372)
小田 豊 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50403150)
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キーワード | 熱工学 / フィルム冷却 / PSP / LIF / RANS / LES / 旋回流 |
研究概要 |
平成23年度の円孔に続き、フィルム冷却空気の流れに旋回を付与する構造を用いて、シェイプトフィルム冷却孔からフィルム冷却空気を主流に吹き出す実験を行った。シェイプトフィルムの形状は、壁面に30°の角度で円形孔をあけ、出口を壁面に角度15°、スパン方向にそれぞれ15°の広がりを持たせた形状から成り立っている。壁面の詳細なフィルム冷却効率を感圧塗料(PSP)で測定し、フィルム冷却空気と主流の混合状況を、粒径1~5μmのオリーブオイルミストを主流およびフィルム冷却空気中に付加した粒子画像流速計(PIV)とアセトンレーザー励起蛍光法(LIF)を適用して、フィルム冷却空気と主流の混合場の濃度、速度場の同時計測を行った。二次元瞬時値ではあるがシェイプトフィルム孔からの吹き出し位置より後流における中央断面の空間濃度分布および速度分布、さらに流れに直角方向の断面における速度分布と濃度分布の詳細な定量データが把握された。数百枚の瞬時値を平均化することによって平均量を求め、さらに瞬時値との差から変動成分を求めた。 これらのデータは現象の解明のみならず時間平均されたReynolds Averaged Navier-Stokes Simulation(RANS)およびLarge Eddy Simulation(LES)等の数値解析の検証用データベースとして活用することができる。 本研究では、実験と同じ形状および条件での30°壁面に傾いた円孔フィルム冷却孔からの吹き出しの主流との非定常の混合現象を商用コードによるRANS解析および自主開発したLESコードで解析し、円孔から出た旋回を持つフィルム冷却空気の片側が、壁面に衝突し壁面上に広がっていく状態が解析的にも解明された。旋回を持つ円孔フィルム冷却からの吹き出しに関してフィルム冷却効率を向上させるメカニズムが実験および解析の両面から解明することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シェイプトフィルム孔はフィルム冷却孔の出口を流れ方向とスパン方向に広げて、冷却空気の速度を落とし、主流への貫通を小さくして且つ出口形状に沿ってフィルム空気がスパン方向に広がり、高いフィルム冷却効率を達成する方法である。シェイプトフィルムと言えども、Y方向(壁と直角方向)の速度成分をフィルム冷却空気に有する為、フィルム冷却空気は壁から離れる方向の力を持つことになる。H24年度の実験および解析から、シェイプトフィルム孔の場合、弱い旋回をフィルム冷却に掛ければ、フイルム冷却効率は旋回無しの場合に比較して、約70%フィルム冷却効率が向上することが実験的に明らかになった。フィルム冷却に旋回を付与する事によって、フィルム冷却効率をシェイプトフィルムで70%向上させる事が出来たことはその利用の面からも画期的な考案で有りメカニズムを解明しつつあることは、さらにフィルム冷却効率の高いフィルム冷却孔形状の存在の可能性を意味している。円孔フィルム冷却からのフィルム冷却空気と主流との混合問題は自主開発したLESコードによって解かれた。フィルム冷却空気と主流の混合場は、非定常の流動場であるが、その流れを解くと共に、時間平均した解析値と、実験で測定された瞬時値を平均化した速度場および濃度場の値と比較して非常に良い一致を見た。実験に使用したダブルパルスレーザーの周波数が約10Hzで連続した非定常の流れの観察が出来ないのが残念である。しかしダブルパルスで撮影したPIVおよびLIF画像を数百枚比較すると、フィルム冷却の混合を構成している非定常流れの状況が明らかになりつつある。 以上の実験およびLES解析の成果を国際会議(1件は基調講演)で発表する事によって研究成果を広く公開することが出来ると共に専門家からの高い評価を受けることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
現在は主流の流れの方向にフィルム冷却空気を流す実験・解析を実施しているが、主流と角度を持った吹き出し(コンパウンド角)はフィルム冷却空気に旋回を持たせないで、主流との干渉によって双子渦を変形させ、壁面にフィルム冷却空気を噴流的に固着させる方法と言われている。端壁面では翼の腹側に圧力の高い箇所から、翼背側の圧力の低い側に流れる、いわゆる二次流れが生じる。この二次流れ中に、旋回を持つフィルム冷却を行った場合、二次流れと旋回流とが干渉して、高いフィルム冷却効率を達成出来る可能性を有する。H25年度の研究では、シェイプトフィルムから旋回を持つ空気を吹き出したH24年度の実験の系でのLES解析を実施し、LES解析精度の検証を行う。さらに実験では、翼列風洞の端壁面に旋回を持つシェイプトフィルム孔を配置し、PSPによる壁面におけるフィルム冷却効率の測定と空間濃度分布をLIFで測定する。 また、旋回を有する円孔フィルム冷却の実験・解析結果および旋回を有するシェイプトフィルムの実験結果をまとめ、国際・国内会議で発表して成果を広く公開する。
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次年度の研究費の使用計画 |
・PIV,アセトンLIFに用いるレーザーシートを製作するミラー類費 ・窒素ガス、アセトンなどの実験消耗品 ・成果発表、研究動向調査のための国内出張および海外出張旅費
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