研究課題/領域番号 |
23560236
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
谷川 洋文 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80197524)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 固体高分子形燃料電池 / 可変ガス流路 / 可視化 / 格子ガス法 |
研究概要 |
本研究は,固体高分子形燃料電池のカソード側ガス流路を形成するリブを可動型にし,発電状況に応じてその位置を変え,酸化ガスの流動パターンを変えることで,"無加湿で高電流密度発電","氷点下環境での発電を想定した凍結防止のためのガスパージによる燃料電池内部低含水時の起動と発電"等といった過酷な発電条件で燃料電池内部の水分量を適正に動的コントロールし,長時間の安定発電を可能とする可変ガス流路の開発を目的とする.なお,これまでの実績から,無加湿・高電流密度での発電時では,"燃料電池内の温度変化の検知"が,ガス流路の切換えタイミングに成り得る可能性があるとの結果を得ている.平成23年度は,氷点下環境での発電を想定した燃料電池内部低含水時の起動と発電のためのガス流路の最適な可変タイミングの知見を得るため,格子ガス法による数値解析と実験を行った.なお本年度の実験では,リブを小型アクチュエータで機械的に動かすことでガス流路の任意に変更をできるようにした.まず,各ガス流路における初期水分量と発電特性との関連および起動限界初期水分量を数値解析と実験で調べた.その結果,起動が可能な燃料電池内部の初期含水率は,サーペンタイン型よりもストレート型の方が低いことが分かった.次に,ガス流路の切り替えタイミングであるが,セル(燃料電池)内部の水分量との関連があるセル(燃料電池)抵抗情報が有用であることが分かった.そこで,より低含水率で発電可能なストレート型で起動し,セル内部の適切な水分量をセル抵抗で判断し,サーペンタイン型流路を切替えれば,低保水状態での起動および安定発電が可能となることが分かった.なお,本研究成果は,第49回日本伝熱シンポジウム(2012年:富山)および,3rd International Forum on Heat Transfer 2012(2012年:長崎)で発表予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験に関しては,最適な水分状態を得るためのガス流路選択(切替え)タイミングに対して,これまでの実績から燃料電池内の温度変化の検知がその判定パラメータに成り得るとの結果を得ていたが,平成23年度の実験において,ガス流路の切替えタイミングに燃料電池の抵抗情報が有用であることが新たに判明した.また,平成23年度は流路切替えのためのリブの移動を手動ではなく小型アクチュエータで機械的に行えるようにした.数値解析に関しては,平成23年度に発電モデルを新しくしたことで,従来再現できていたフラッディング・プラッギングによる出力低下だけでなく,膜電極接合体(MEA)の乾燥(ドライアウト)を反映した出力低下を再現できるようになった.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は,ガス流路の最適な可変タイミングおよびその判定パラメータに関しての新たな知見を得る.具体的には温度変化,燃料電池抵抗以外に流路切替えの判定パラメータがないかを調べ,さらに各判定パラメータ間の関係についても調べる.得られた判定パラメータ情報をもとに可変タイミングと位置をコンピュータでフィードバック自動制御することができる自動可変ガス流路を試作し,その動作確認を行うとともに,発電特性と生成水挙動に及ぼす自動可変ガス流路効果を検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に購入した物品が,予定していた金額よりも安く入手できたため,次年度使用の研究費が発生した.平成24年度に請求する研究費と合わせた使用計画を以下に記す.・発電実験に必要な消耗品(MEA,窒素ガス,水素ガス,小型アクチュエータ)の購入.・ガス流路の可変タイミングを決定するパラメータ情報をもとに最適な可変タイミングとガス流路形状(リブ位置)を自動制御できるシステムを構築するためのコンピュータ等機器の購入.
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