研究課題/領域番号 |
23560236
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
谷川 洋文 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80197524)
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キーワード | 固体高分子形燃料電池 / 可変ガス流路 / 可視化 / 格子ガス法 |
研究概要 |
本研究は,固体高分子形燃料電池のカソード側ガス流路を形成するリブを可動型にし,発電状況に応じてその位置を変え,酸化ガスの流動パターンを変えることで,様々な発電環境で長時間の安定発電を可能とする可変ガス流路の開発を目的とする. 平成24年度は,ガス流路の最適な可変タイミングおよびその判定パラメータに関しての新たな知見を得ること,また得られた判定パラメータ情報をもとに可変タイミングと位置をマイコンでフィードバック自動制御することができる自動可変ガス流路を試作し,その動作確認を行うとともに,発電特性と生成水挙動に及ぼす自動可変ガス流路の効果を検討した. 平成23年度の実験において,無加湿,低保水状態で起動した際,発電初期に出口側のガス流路面が生成水によって曇ることが観察された.そこで赤外線受光量の変化を感知する赤外線センサを流路切り替え指標のセンサとし,可視化面の曇りによる赤外線受光量変化を感知することでモータの回転をマイコン制御する自動可変ガス流路を試作した.試作した燃料電池は,マイコンで一対のモータの回転を制御し,左右一対のリブをそれぞれ上下に4[mm]直進駆動させることで,流路幅8[mm]のサーペンタイン型と,流路幅8[mm]と4[mm]のストレート型を選択することができる.そこで,サーペンタイン型流路で発電しない低初期含水率の条件において,保水性の良いストレート型流路で起動し,MEA内部の水分を発電できるまで増加させ,その後にサーペンタイン型流路に切り替える自動化を試みた. その結果,赤外線センサが発電初期の曇りを感知し,プログラム制御されたマイコンによって,モータを駆動させ,ガス流路をストレート型からサーペンタイン型に変更し,長時間の発電が可能であることを確認した. なお,本研究成果は,第50回日本伝熱シンポジウム(2013年:仙台)で発表予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は,マイコン制御によるガス流路変更の自動化に成功した.平成23年度の実験において,無加湿,低保水状態で起動した際,発電初期に出口側のガス流路面が生成水によって曇ることが観察されていた.そこで,可視化面の曇りによる赤外線受光量変化を感知する赤外線センサを流路切り替え指標のセンサとし,モータの回転をマイコン制御する可変ガス流路の自動化を試みた.その結果,サーペンタイン型流路で発電しない低含水条件において,保水性の良いストレート型流路で起動すると,赤外線センサが発電初期のMEA内部の水分増加による曇りを感知し,プログラム制御されたマイコンによって,モータを駆動させ,ガス流路をストレート型からサーペンタイン型に変更し,長時間の発電が可能となることが確認できた. また,発電後に膜電極接合体(MEA)を取り出し,赤外線熱画像装置でその熱画像を取ることでMEA内部の水分分布を推測する方法を確立した.これにより発電時の水分挙動の検証が数値解析結果と合わせて行えるようになった.
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今後の研究の推進方策 |
ガス流路変更の自動化(実験) ◎マイコン制御タイプ:平成25年度は,平成24年度に試作したマイコン制御技術をもとに,ガス流路幅を狭くしたサーペンタイン型―ストレート型切替えタイプやリブの移動でガス流速を局所的に変えることのできるタイプなどの自動化を試みる.また平成24年度に確立したMEA内部の水分分布可視化技術(赤外線熱画像)をもとに,ガス流路の切り替えによるMEA内部の水分分布変化と出力変化の関係を明らかにする.この赤外線熱画像から水分分布を推定する可視化法には,可視化雰囲気の温度と湿度を一定に保つ必要があり,これまでは恒温・恒湿室を使用してきたが,空間が広いため撮影部近傍の細かな温湿度制御が困難であった.そこで,今年度は局所的な温湿度制御が可能となる小型恒温恒湿器による赤外線熱画像水分分布可視化システムを確立する. ◎自動可変タイプ:プラッギングやフラッディングが発生すると燃料電池内部の温度が急上昇することが過去の実験で観られた.そこで,この温度の上昇と下降に感知・追従して形状が変化する二方向性(可逆)形状記憶合金板を使用し,温度変化によってガス流動を変れるようなガス流路を試作する.この形状記憶合金板の可動温度(変形温度)は,プラッギングやフラッディング発生・解消時の温度変化から決定する.製作は外注で行う. なお,この自動可変タイプの試作に関しては,形状記憶合金板の可動温度の決定やその後の製作に時間がかかる可能性があるので,スケジュールとしてはマイコン制御タイプを優先する. 数値解析に関しては,解析手法である格子ガス法の粒子移動規則を高度化を試みる.具体的には粒子移動の自由度を6から19に増やす.この高度化により計算負荷が増え,計算時間が長くなるが,燃料電池内部のガス流動ならびに水分挙動がより実際の現象に近づくと考える.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に購入した物品が,予定していた金額よりも安く入手できたため,次年度使用の研究費が発生した. 平成25年度に請求する研究費と合わせた使用計画を以下に記す. マイコン制御システム1式,小型恒温恒湿器,発電実験に必要な消耗品(MEA,窒素ガス,水素ガス等),二方向性(可逆)形状記憶合金板,ワークステーション1式
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