本研究は,固体高分子形燃料電池のカソード側ガス流路を形成するリブを可動型にし,発電状況に応じてその位置を変え,酸化ガスの流動パターンを変えることで,様々な発電環境で長時間の安定発電を可能とする可変ガス流路の開発を目的とする. 平成25年度は,更なる生成水の動的コントロール技術として,古来より日本家屋の壁材として知られる漆喰材(珪藻土)の調湿効果が,最先端技術である燃料電池内の余剰生成水の動的制御ならびに積極的な加湿に利用可能ではないかと考え,ガス流路を構成するリブを珪藻土の調湿素材で成形した『調湿ガス流路』を提案し,燃料電池の水分挙動ならびに性能について検討を行った. カソード側の可動リブは市販の珪藻土板を直径30[mm],厚さ1.5[mm]の円形に加工したものを使用した.なお,この珪藻土リブは手動およびモータで回転させた. リブを回転せずに固定した場合,開始から約140分頃にリブの上部および出口側に水が溜まりプラッギングが生じた.これにより出力の低下と変動がみられた.そこで出口側の水を水の溜まっていない入口側に持っていくようにリブを180°回転させてみた.回転周期はリブの出口側に水が現れる10[min]とした.その結果,出口側に溜まった水は回転毎に入口側で乾燥し,プラッギングは発生せず出力の低下が抑えられ,安定した出力を維持することを確認した.すなわち,排水性ならびに保水性の高い珪藻土リブを有する燃料電池は,リブを回転させることで吸水・排水を繰り返し,その調湿効果を持続させることで,低電流密度条件の発電においてはプラッギングによる出力の低下を抑制する効果を持つことを確認した. なお,本研究成果は,第51回日本伝熱シンポジウム(2014年:浜松)で発表予定である.
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