研究課題/領域番号 |
23560237
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
桃木 悟 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60244034)
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研究分担者 |
茂地 徹 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90100883)
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キーワード | 熱工学 / 伝熱機器 |
研究概要 |
1. 調査研究: 機械学会年次大会,冷凍空調学会年次大会,および熱工学コンファレンスにて,管内沸騰に関連する技術や現象のメカニズムに関する調査を行った。 2. 環状流へ遷移する点,液膜の破断が開始する点の予測手法の整理: 比較的口径の大きい内面ら旋溝付管内蒸発熱伝達に関して,物性の大きく異なるアンモニアとフロン系冷媒(HCFC123, HCFC22, HFC134a)のこれまでの測定結果を整理し,比較的流量が大きい場合について層状流から環状流に遷移する点のクオリティ(蒸気の質量分率)に関する予測手法の作成を試みた。第1段階として,物性値の影響をより鮮明にするために伝熱を伴う気液二相流の整理の際によく用いられている無次元数であるフルード数Fr, Lockhart-MartinelliパラメータXtt, ボイリング数Brの影響に着目して一つの式でこの両方の流体に適用できるかを検討した結果,比較的良い精度で遷移点のクオリティを整理できる事を示した。また,ドライアウトを開始して熱伝達が極端に低下する点と液膜が極端に薄くなり伝熱の支配メカニズムが強制対流から薄液膜の蒸発へと変化する点のクオリティについても同様の整理を行ったところ,これもフルード数Frとボイリング数Brを用いて作成した一つの整理式が両方の流体に適用できる事を示した。 3. 環状流域と分離流域における蒸発熱伝達率の予測手法の整理: 環状流へと遷移する点,強制対流が支配的となる十分に厚い液膜が破断する点の簡易予測手法が構築できたので,環状流域と分離流域の蒸発熱伝達の整理を試みた。先の流動様式の予測手法の構築の場合と同様に,まずは無次元数を組合せた比較的単純な手法から開始したところ,比較的良好な精度で予測できる式を得る事ができた。 以上の成果は,3つの国内学会と2つの国際学会にて発表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,溝付き管内蒸発流の熱伝達について,できるだけ物理法則に基づいた整理手法を提案する事を最終的な目的としており,そのためにまず物性値の影響をあきらかにするために,従来は個別の整理式を作成していた物性が大きく異なる流体について一つの式で整理できる式を構築する事を目指している。 管内気液二相流は非常に複雑であり条件によって異なる流動様相を呈するため,短期間の研究でその全てを網羅する事は困難である。まず,第1段階として実用的には最も重要な環状流域に対して,物性の異なるアンモニアとフロン系冷媒について,流動様相と熱伝達両方の予測式の作成を試みた結果,無次元数を用いた従来の手法に改良を加えた比較的単純なものであるものの,一つの式で両方の流体に対して比較的良好な精度で予測できる整理式を提案する事ができた。 整理の範囲を広げるために,アンモニア,フロン系冷媒の両方についてさらなる実験を予定していたが,こちらについては若干の送れがある。特にフロン系冷媒の実験のために再構築している実験装置は昨年度中に稼動させる予定であったが,これが2013年度初期までずれこむ予定である。 以上のことから,一部遅れがあるものの,全体としてはおおむね順調であると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
1. フロン系冷媒を用いた比較的小口径の溝付管を用いた管内沸騰実験装置の制作と実験:これまでに実験装置がほぼ完成させたので,その仕上と試験を行う。その結果を受けて実験を開始しデータを取得する。 2. 流動特性や伝熱特性が顕著に変化する事が既にわかっているより低い流量におけるアンモニアの内面ら旋溝付管内沸騰熱伝達の実験:昨年度予定していた実験を終了できなかったので,早期に実験を行いデータの取得を終了させる。 3. フロン系冷媒と純アンモニアの水平ら旋溝付管内蒸発における流動様式の整理:昨年までの無次元数を利用した簡便な手法を用いて,液膜が破断を開始して強制対流が支配的とならなくなる点の予測について,ドライアウトする場合と薄液膜になる場合との違いに着目してより詳細な検討を行う。また,環状流が開始する点の予測手法に関しては,これまでの成果を踏まえて統一的な物理モデルの構築に着手する。 4. 薄液膜で覆われている領域の熱伝達率:昨年まで環状流域の熱伝達率の整理の際に利用した半理論的な手法を用いて,分離流域の上部や環状流の液膜が破断した際に生じる極めて薄い液膜で覆われている領域の熱伝達率の整理を行い,この領域に着目した熱伝達率の整理式の作成する。 5. 成果を総合的に判断する事により,本研究手法による「物性が大きく異なる流体へ適用可能な内面溝付管内蒸発統一物理モデルの構築」の可否について評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1. 物品費:(1)フロン系冷媒を用いた比較的小口径の溝付管を用いた管内沸騰実験装置の制作に係る費用:配管や配線の仕上げに要する費用:20万程度。(2)アンモニアの実験装置の保守に要する費用:10万程度。(3)データの整理の際に使用するPC等の機器に関連する費用:10万程度。報告書作成に要する費用:5万程度。 2. 旅費: (1)調査研究や成果公表に関する旅費:20万程度。(2)佐賀大学海洋エネルギー研究センターでの実験に要する旅費:10万程度。 3.その他:学会参加費: 5万程度。
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