研究課題/領域番号 |
23560242
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
矢作 裕司 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (60265973)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 燃焼 |
研究概要 |
本研究は、直噴ガソリンエンジンおよびディーゼルエンジンの初期燃焼時などに形成される非定常・非均質燃料濃度の乱流燃焼の局所消炎現象(火炎の一部が消炎する現象)を対向乱流場で実験的に再現して解明することを目的とする。研究の概要は次の3段階に大きく分けることができる。第一段階(Phase1)予混合火炎と拡散火炎に乱れを添加して衝突させる対向流場を用いて、非定常かつ非均質の燃焼場を定在燃焼で実験的に再現する燃焼モデルを構築する.第二段階(Phase2)所消炎部の挙動を時系列的に追跡して局所消炎の発生過程とその回復機構をモデル化する.第三段階(Phase3)局所消炎部の火炎構造をエッジ火炎片モデルと仮定して解明することにより、実機で生じる局所的な現象を学理化するための基盤を実験的に構築する(最終目標).平成23年度は、第一段階(Phase1)を遂行し、その目的をほぼ達成できた。特に、消炎クライテリアの分類と局所消炎とその回復機構モードの分類は層流火炎に対しては詳細な火炎構造の検討から明らかにすることに成功できた。購入したハイスピードカメラも研究遂行に効果的に使用している。査読論文1編および学会での口頭発表を1件の実績を残すことができた。今後も計画通りに研究を進める予定である。唯一の懸念事項としては、3次元現象を2次元計測で捉えていることに対する測定誤差など影響の見積もり方である。その点については、国際会議に投稿した論文の査読者からも厳しく指摘されているので次年度には早急に対応策を考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた項目は全て実施した。特に、消炎クライテリアの分類は、予混合火炎支配の消炎と拡散火炎支配の消炎を複合火炎の消炎限界の2つの領域に分類することを層流時の火炎構造から明らかにした。その成果は、日本機械学会論文集(B編)に投稿受理されて掲載が確定している。具体的には、拡散火炎(DF)側の燃料濃度(χU)の増加による希薄予混合火炎(LPF)側の当量比(φL)の減少率が一定な拡散火炎支配消炎(DF-DE)領域とχUが増加するほどφLの減少率が増加する希薄予混合火炎支配消炎(LPF-DE)領域に複合火炎の消炎限界が分類できることを明らかにした.DF-DE領域とLPF-DE領域の火炎構造とそのφL依存性には次のような相違点がある.DF-DE領域では,DF付近を最高温度とした対称な温度分布であり,φLを変化させても対称性は保たれる.LPFに比べてDFの方が高温であるため,LPFはLPF-DF間からの熱的な補完によって維持されている.φLが増加するほどLPF-DF間の温度勾配は減少するのに対して,層流燃焼速度と燃焼ガス幅は変化しない.LPF-DE領域では,LPF付近を最高温度とした燃料側に比べ予混合気側の温度勾配が急な非対称な温度分布である.DFに比べてLPFの方が高温であるため,DFはLPF-DF間からの熱的な補完によって維持されている.φLによってLPF-DF間の温度勾配は変化しないのに対して,層流燃焼速度と燃焼ガス幅はφLが増加するほど増加することなどを明らかにした.
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に実施する第一段階(Phase1)は、研究計画通りに実施できたため平成24および25年度も申請時の計画に沿って研究を推進する。平成24年度 第二段階(Phase2):具体的には、(1)Passive modeおよび(2)Active modeの詳細の解明である. Passive modeでは、局所消炎が発生してから、全体の消炎に至る過程を時系列的に捉えて解析する.Active modeでは、局所消炎部の火炎端部構造をEdge flameと仮定して進める.ただし、 Edge flameの存在が確認できない場合には、火炎端近傍の予混合火炎の局所火炎伝播速度などを調べて他の要因を調査する.平成25年度 第三段階(Phase3):Eddy modeを解明して研究のまとめを実施する.Eddy modeでは、局所消炎部と近傍の渦度を中心とした時系列挙動を解析する.ここでは、乱れエネルギーが反応帯の輸送にどのようにして伝わるかについて、未反応流の渦強度と燃焼ガス中の渦強度を時系列的な相関を取りながら解析する.そして、乱れを添加していない側の反応帯に乱流側の渦エネルギーがどの程度伝わるかについても考察してEddy modeの機構を解明する.3カ年の研究のまとめは、(1)予混合火炎支配の消炎と拡散火炎支配の消炎クライテリアおよびそれに乱れが果たす役割.(2)Passive mode, Active mode, Eddy modeの3つのモードの発生確率を乱れと各反応物の組成でまとめたマップ.(3)3つのモードの詳細機構モデル.特に国内外のDNSや層流火炎の研究が議論している負の燃焼速度(Negative burning velocity)を持つ予混合火炎の存在が、予混合拡散燃焼(層流および乱流含め)でも存在するかなどについても検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、設備備品の購入予定はないが、消耗品として実験装置改修用部材、光学部品、可視化のためのシリコンオイルおよびアルミナ粒子、配管材料、記録媒体(ハードディスク)などの購入を予定している。また、順調に成果が出ているので、国内または国際会議などで成果発表をするための旅費や論文掲載料などに研究費を使用する予定である。
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