研究課題/領域番号 |
23560242
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
矢作 裕司 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (60265973)
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キーワード | 燃焼 |
研究概要 |
本研究は、直噴ガソリンエンジンおよびディーゼルエンジンの初期燃焼時などに形成される非定常・非均質燃料濃度の乱流燃焼の局所消炎現象(火炎の一部が消炎する現象)を対向乱流場で実験的に再現して解明することを目的とし、次の3段階に分けて実施している。初年度(平成23年)は、第一段階(Phase1)である予混合火炎と拡散火炎に乱れを添加して衝突させる対向流場を用いて、非定常かつ非均質の燃焼場を定在燃焼で実験的に再現する燃焼モデルを構築した.昨年度(平成24年)は、第二段階(Phase2)所消炎部の挙動を時系列的に追跡して局所消炎の発生過程とその回復機構のモデル化を行った.その結果、局所消炎からの回復には局所消炎箇所に火炎安定点(よどみ点)が含まれているかが鍵となることが明らかとなった。二次元瞬間速度分布の解析結果から火炎の局所的な伝播速度とそこに流入する未燃焼ガスの流速の釣り合いを定量化した。それらの成果には、国際会議2編(内1編は査読論文)および国内口頭発表1件に実績を残すことができた。現在予定通りに研究が進行している。唯一の懸念事項であった3次元現象を2次元計測で捉えていることに対する測定誤差など影響の見積りも定量化する見込みが付いたので最終報告で示すことが可能である。本年度(平成25年)は、最終目標である第三段階(Phase3)局所消炎部の火炎構造をエッジ火炎片モデルと仮定して解明することにより、実機で生じる局所的な現象を学理化するための基盤を実験的に構築する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載したように本研究は、①Phase1: 全体消炎のクライテリアおよび局所消炎とその回復機構の分類→②Phase2: Active modeの火炎構造モデルとPassive mode (全体消炎)の解明→③Phase3: Eddy-modeの3段階で実施している。現在までに、①および②について終了し、その成果も学術論文等で掲載または投稿している。特に、申請時に予測した局所消炎とその回復機構として3つのモード(Passive mode, Active mode, Eddy mode)の存在がほぼ明らかとなったことから研究の7割は遂行できたと判断できる.局所消炎部に近接する火炎端が十分な自己伝播性を持つことにより回復する機構を局所的な火炎伝播速度と未燃焼ガスの実測データーから分析出来たことは重要であった.今後は、予定通りにActive modeの火炎端部の局所火炎構造をEdge flameと仮定し、時系列画像データーからActive modeの局所消炎回復モードを抽出してEdge flameの存在を明らかにする.
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今後の研究の推進方策 |
予定通りに研究が進んでいるの最終年度は、Phase3に示したEddy modeの解明をして研究をまとめる予定である. Eddy modeの解明は、局所消炎部に火炎片が乱流渦輸送により運ばれることに回復するモードであることがほぼ明らかとなったために、局所消炎部と近傍の渦度を中心とした時系列挙動の解析を実施する.解析データーにはActive modeと同様に時系列PIVを使用する.ここでは、乱れエネルギーが反応帯の輸送にどのようにして伝わるかについて、未反応流の渦強度と燃焼ガス中の渦強度を時系列的な相関を取りながら解析する.そして、乱れを添加していない側の反応帯に乱流側の渦エネルギーがどの程度伝わるかについても考察してEddy modeの機構を解明する. 総合的なまとめは、当初の予定通りに次の3点をまとめる予定である.①予混合火炎支配の消炎と拡散火炎支配の消炎クライテリアおよびそれに乱れが果たす役割.②Passive mode, Active mode, Eddy modeの3つのモードの発生確率を乱れと各反応物の組成でまとめたマップ.③3つのモードの詳細機構モデル.特に国内外のDNSや層流火炎の研究が議論している負の燃焼速度(Negative burning velocity)を持つ予混合火炎の存在が、予混合拡散燃焼(層流および乱流含め)でも存在するかなども付帯検討事項として加えたいと考えている.本実験モデルを用いて非定常非均質乱流火炎の局所消炎とその回復機構現象の学理化する基盤の一つとなると期待できる.最終的には、局所消炎をアクティブコントロールするための研究へ発展できればと考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
基本的には、実験を遂行するための材料費とその成果発表のための旅費および論文掲載料に使用する予定である。
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