研究課題/領域番号 |
23560244
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
中垣 隆雄 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (30454127)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | エクセルギー / 固体酸化物形燃料電池 / 排熱利用 |
研究概要 |
エネルギー問題の解決策の一つとして,排熱の有効利用が挙げられる.本研究では,メタンの電気化学的部分酸化反応(以下,EPOx)による排熱のエクセルギー再生を図るべく,電気化学反応器としてマイクロチューブ型固体酸化物形燃料電池(以下,SOFC)を作製してEPOxを実現させることで排熱の電気への変換効率を定量化することを目的とする.平成23年度はSOFCの電解質層とカソードのキャラクタリゼーションによって,クロスリークを遮断できる緻密な電解質層の形成と,水素による発電性能の高いSOFCの作製方法の確立を目標とした.研究開始当初の電解質層にはクラックやピンホールによるクロスリーク,カソード層には表面の凹凸や粉末の凝集体が散見され,発電試験後はカソードの剥離が確認されていた.そこで,電解質層の調合においては電解質焼結プロセスの制御による作製工程の改善,カソード層においては調合時における原料の十分な攪拌および原料の粉砕・微細化を新たに標準工程に加えた.その結果,電解質層およびカソード層の膜厚はそれぞれ約15ミクロン,約20ミクロンで均質かつ再現性も確保され,クロスリークを完全に抑えることに成功した.このSOFCで燃料を水素とする発電試験を実施し,460~550℃におけるSOFCの発電特性と交流インピーダンス法により得られたインピーダンス特性を評価した.その結果, 470℃,500℃,550℃における最大出力密度は,それぞれ131,194,238 mW/cm2であり,これまで文献で報告された最高性能とほぼ同等の高い発電性能を示した.一方,本実験での燃料利用率やアノード気孔率がそれぞれ約3.9%,5.2%と低く,物質拡散抵抗が大きいため,高い発電性能を有するSOFCの設計指針として,造孔剤の種類や量をパラメータとしたSOFC作製でアノード細孔構造の最適化が必要であることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)マイクロチューブ型SOFCの製作円筒型SOFCの製作は押し出し成型によるため,原料スラリーの調整がキーポイントである.大量に作製すれば品質も安定するが,ラボレベルでの少量の作製には多くの困難がある.しかしながら,少量の原料の均一な調整のため全ての工程を見直し,技術を一つ一つ積み上げた結果,発電試験で最高性能とほぼ同等の結果が得られたことから,計画通りに達成できたと言える.(2)SOFC単セルシミュレーションコードは完成しており,水素による発電試験の検証も終了しており,計画通りに進行している.
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今後の研究の推進方策 |
(1)メタンの電気化学的部分酸化の実験 メタンの選択的な電気化学的部分酸化の試験は予定通り本年度から本格的に開始する.電極触媒の種類を調整し,発電試験を実施する.(2)単セルシミュレーション (1)の電極を変えた試験の結果を受け,完成した単セルシミュレーションのパラメータフィッティングを行い,セル性能と熱取り込み量を計算する.(3)システム解析 MGTや車載エンジンを熱機関としたシステムの性能向上と排熱のエクセルギー再生効果を定量的に予測する.市販のプロセスシミュレータASPEN PLUSを用い,単セルシミュレーションで予測したセル性能をユーザモデルに組み込んでシステムのモデルを構築し,システム解析を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)システム解析プロセスシミュレータソフト ASPEN ONE (Academic package for Chemical Engineering) 1ライセンス (2)試験消耗品類ガスボンベ:窒素,水素,メタンガス,ガスクロ標準ガス,ガスクロキャリアガス 原料試薬:NiO,GDC,LSCF,Pt,Ru,Pd,Rh 反応器関連:配管および反応容器,バルブ,継手類,集電用銀線,絶縁管,保温材などを購入予定.
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