研究課題/領域番号 |
23560244
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
中垣 隆雄 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30454127)
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キーワード | エクセルギー / 排熱回収 / 電気化学的部分酸化 / 固体酸化物形燃料電池 / 低温作動 / マイクロチューブ / GDC / CO生成 |
研究概要 |
エネルギー問題の解決策の一つとして,排熱の有効利用が挙げられる.本研究では,メタンの電気化学的部分酸化反応(以下,EPOx)による排熱のエクセルギー再生を図るべく,電気化学反応器としてマイクロチューブ型の固体酸化物形燃料電池(以下,SOFC)を作製してEPOxを実現させることで排熱の電気への変換効率を定量化することを目的とする.平成24年度は,メタンによる発電性能の高いSOFC作製工程の確立,SOFCと組み合わせてEPOxを選択的に生じさせる触媒の調整を目標とした.平成23年度の研究成果である水素での発電試験結果は470℃,500℃,550℃でそれぞれ最大出力密度131,194,238 mW/cm2と高い値を示した.しかし,アノードチューブの気孔率は5%程度で,反応場の面積が小さいことに起因する大きなアノードの過電圧が課題であった.本年度の研究ではアノードチューブの気孔率増大による反応抵抗の低減を図ることになるが,気孔率の増大は多孔質体でSOFCの基材としても機能するアノードチューブの機械的強度を著しく下げる.両立のための対策としてアノードチューブ調合時に造孔材を添加し,アノードチューブ脱脂時の温度を上昇させたことで,SOFCの三点曲げ試験において十分な機械強度を保持しながら気孔率を約20%まで向上させることが可能となった.このSOFCを用いてメタンによる発電試験した結果,500℃において最大出力密度132.8mW/cm2を示した.一方,EPOxのための触媒は苦戦している.Ni/GDCとNi/MgAl触媒を調整したが,水素への選択性は高いがCOの選択率は低い.ガス組成と開回路電圧から反応機構を推定すると目指すEPOxよりも熱取り込み量が少ない固体炭素経由あるいは完全酸化経由の反応経路を辿っており,現状ではエクセルギー増進の量的な効果が少ない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)マイクロチューブ型SOFCの作製◎ 23年度の研究では水素による発電試験,24年度の研究ではメタンによる発電試験でチャンピオン文献値と同等以上の高い性能を示し順調である.触媒実装方法も既に確立している. (2)部分酸化触媒△ 本研究では電気化学的に部分酸化を生じさせることが必須であり,水素とCOの生成物は同じであっても,反応経路が異なると熱取り込み量も減少し,エクセルギーへの変換量も減少する.Ni/GDCとNi/MgAl触媒では熱分解経由や水蒸気改質経由での反応経路であり,理想的なEPOxとはいえない. (3)円筒型SOFCのシミュレーションコード○ コードは完成しているが,上記(2)の反応に関するデータが取得できていないため,理想的なEPOxのみの結果しか得られていない. (4)ASPEN PLUSによるシミュレーション○ プロセスフローダイヤグラム(PFD)は完成しているが,上記(3)で理想的な結果しか組み込めていない.
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今後の研究の推進方策 |
(1)三相界面の拡大 気孔率を増大させながらも機械強度の十分なマイクロチューブ型SOFCの作成には成功した.しかしながら,反応における活性化エネルギーはやや大きく,三相界面を拡大する必要がある.次年度はアノードと電解質の間にGDCリッチなアノード層を追加することで三相界面を飛躍的に拡大して改善を図る. (2)メタンの電気化学的部分酸化 部分酸化に対してはNiが活性を示すが,同時に炭素析出も発生し熱分解経由の部分酸化も生じやすくなる.そこで炭素析出抑制効果の高いMgOを担体に用いてNi を担持させた触媒をベースに,助触媒としてCeO2あるいはCaOを添加した材料の3種類を調整し,部分酸化の選択性と炭素析出抑制効果の両立を目指す. (3)単セルならびにシステムシミュレーション コードならびにPFDは完成しているため,(1),(2)を中心としたハードとしての実現に研究の重点を置く.
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次年度の研究費の使用計画 |
試験消耗品類 ガスボンベ:窒素,水素,酸素,メタンガス,ガスクロ標準ガス,ガスクロキャリアガスなど 原料試薬:NiO,GDC,LSCF,Mg(NO3)2・6H¬2O,Ni(NO3)2など 反応器関連:配管および反応容器,バルブ,継手類,集電用銀線,絶縁管,保温材など触媒調製関連:真空ポンプ,ホットスターラー,大型ビーカーなど プロセスシミュレータ ASPEN PLUSの年間ライセンス料
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