本研究では,固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell,以下SOFC)を反応器としてメタンの電気化学的部分酸化(EPOx)を実現させることで排熱の電気への変換効率を定量評価することを目指す.最終年度はPt/Al2O3触媒のアノードへの実装とドライメタンを燃料としたSOFCの発電試験を実施し,得られた発電特性と燃料ガス組成から電気化学反応の経路を特定した.反応機構ではCH4→CH4(s)が律速過程であり,メタンの吸着力の強いAl2O3を担体に用いてPtを担持させることで部分酸化の促進を図った.Al2O3の薄膜をアノード表面に直接形成するため,RF(交流)スパッタリング法で実装した.アノードの平均粒子径50nmと空隙・活性点の確保を考慮してPt/Al2O3の厚さ3nm/10nmを基準に3nm/30nm,10nm/10nm,10nm/30nmの4種類を作製して発電試験に用いた. 予熱した空気30 L/minをカソードに,窒素50 ml/minをアノードにそれぞれ供給して昇温し,カソード近傍の温度が450℃付近で定常に達してから,燃料ガスをメタン50 ml/min,窒素50 ml/minの混合ガスに切り替え,500~600℃における発電特性を評価した.4種類のうち,Pt:3nm/Al2O3:10nmが最も性能が高く,最大出力密度は207.5mW/cm2をマークした.COの選択率は84.3%と極めて高く,部分酸化触媒を実装してもSOFCの性能を低下させずに部分酸化を生じさせることに成功した.部分酸化反応は450℃から650℃までの温度条件で生じており,この温度域の熱を取り込んで電力に変換しながら,H2/COの合成ガスを生成する電気化学的部分酸化による排熱のエクセルギー再生として当初の目的を十分に達成した.
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