研究課題/領域番号 |
23560246
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研究機関 | 山口東京理科大学 |
研究代表者 |
鈴木 康一 山口東京理科大学, 工学部, 教授 (10089378)
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キーワード | サブクール沸騰 / 気泡微細化沸騰 / 限界熱流束 / 気液界面の不安定 / パワーエレクトロニクス / 高熱流束沸騰冷却 / 混合媒体 / 狭隘流路 |
研究概要 |
「気泡微細化沸騰の高熱流束沸騰冷却の応用」として、これまで副流路マルチノズルを備えた冷却デバイスモデルを提案し、純水を冷却媒体として常圧下サブクール度40Kにおいて、最大除熱熱流束500W/cm2を達成し、次世代高発熱密度電子デバイスの予想発熱密度300W/cm2を十分吸収できることが実験により明らかにしてきたが、電気自動車のICインバータの冷却を考えると、実用上不凍液混合媒体を用い、かつ冷却媒体の温度変動および発熱体からの発熱変動にも、十分対応できる冷却性能を有しなければならない。今年度は、不凍液として広く用いられているLLC(Long Life Coolant)のBase Componentであるエチレングリコールの30vol%および50vol%の水との混合液を冷却媒体として、常圧下のサブクールプール沸騰試験を行った結果、純水と同様にサブクール度40K以上で安定した気泡微細化沸騰が発生し、最大熱流束も500W/cm2以上を達成することができた。この結果を、「日本混相流学会2012」「熱工学コンファランス2012」および「ISTP23(Auckland)」国際会議で発表すると共に、「High Heat Flux Cooling Technology for Power Electronics」のタイトルでISTP23に論文を提出し採択された。また、「発熱体からの発熱変動」については、気泡微細化沸騰発生状態で、「液の温度を上昇させた場合」および「発熱体の発熱量を減少させた場合」について実験を行った結果、前者ではサブクール度が減少して膜沸騰に移行することが確認された。後者では、沸騰履歴はあるものの、気泡微細化沸騰が維持され、良好な除熱が可能なことが確認できた。これらの結果は、条件を広げて実験し、本年度の結果と合わせて、国内および国際会議を含み発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「気泡微細化沸騰の高熱流束沸騰冷却の応用」に関しては、不凍液と水の混合液を冷却媒体を用いて実験した結果、気泡微細化沸騰が発生し、沸騰液を用いても沸騰冷却が可能であることが確認できた。また、発熱変動、冷却媒体の温度変動についても、気泡微細化沸騰が維持できる結果が得られたので、研究の目的はほぼ達したものと考えている。「気泡微細化沸騰の発生機構の解明」に関しては、実験装置は完成し試験を行ったが、伝熱面と沸騰容器の接合部に若干の改修が必要であることが分かった。懸案事項である「マイクロチャンネル」に関しては、マンパワーの問題と時間に余裕が不足して、先延ばしになっているが、試験部の構想はほぼ出来上がっているので、今年度(最終年度)で気泡微細化沸騰の発生の有無と特性の確認ができる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
「気泡微細化沸騰の高熱流束沸騰冷却の応用」に関しては、不凍液と水の混合液を冷却媒体をLLC(加熱面をアルミにする必要がある)にして試験を行うことおよび、実用流体ループでは、加圧ループになるので、加圧(1atg)で沸騰特性を調べる。現在、アルミブロックと加圧沸騰容器の設計を初めている。。「気泡微細化沸騰の発生機構の解明」に関しては、装置の伝熱面周りの改修を行い、気液界面が不安定となるサブクール度20K付近で、振動(音響振動)を液中に印加し、気泡崩壊の程度を調べる。「マイクロチャンネル」に関しては、ミニチャンネルまでは加熱ブロックの上部に流路を設置する部分加熱流路が可能であったが、マイクロチャンネルの場合は難しい。最初はマイクロサイズの狭隘流路からサブクール流動沸騰試験を実施し、マイクロチャンネルに繋げる。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在の処、設備備品の購入は予定していない。加圧試験用沸騰容器、加熱ブロック、マイクガップおよびマイクロチャンネルの材料費、加工費、熱電対、ヒーターを主とする消耗品費、国内の学会研究会および国際会議、アルバイト経費に当初計画項目に従って使用する。
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