研究課題/領域番号 |
23560247
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研究機関 | 岐阜工業高等専門学校 |
研究代表者 |
片峯 英次 岐阜工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (00224452)
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キーワード | 最適設計 / 形状最適化 / 形状同定 / 連成問題 / 有限要素法 / 随伴変数法 |
研究概要 |
本研究では,伝熱と弾性変形を連成させた熱弾性場,あるいは伝熱と流れを連成させた熱対流場などの複雑な問題に対して,合理的な多目的形状最適化の解法を提案し,その妥当性を検証することを目的とする.今年度の主な研究実績は次の通りである. 1.前年度に予備的研究として実施した,熱弾性場問題における剛性最大化の単一目的形状最適化,一様粘性流れ場中の孤立物体に生じる抗力最小化・揚力最大化の多目的形状最適化の研究成果を国際会議,あるいは雑誌論文として発表した. 2.熱弾性場問題の予備研究として,部分領域において熱応力分布を規定する単一目的形状決定問題の解法を提案した.形状修正の感度となる形状勾配関数を理論的に導出し,その形状勾配関数を評価するための解析アルゴリズムを提案して,二次元のプログラム開発を行い,解析例から解法の妥当性を確認した. 3.粘性流れ場全領域において散逸エネルギー最小化し,部分領域において流速分布を規定する多目的形状最適化問題の解法を試み,形状修正の感度関数の導出,簡単な数値例から解法の妥当性を確認した. 4.熱対流場の多目的形状最適化に対して,次の二つの解法について検討した. (1)昨年度,部分領域における温度分布規定と,熱対流場全体での散逸エネルギー最小化に対して,重み付き線形和を目的汎関数に設定した多目的形状最適化問題を定式化し,その問題の解法を提案した.本年度はその定式化や解法の不備について検討し,理論や数値解法の改善を試み,解析例から改善した解法の妥当性を確認した.(2) (1)の定式化とは異なり,散逸エネルギーを制約関数に設定して,部分領域における温度分布規定のみを目的汎関数に設定した多目的形状最適化問題を定式化し,その問題の解法を提案した.解析例から解法の妥当性を検討し,ある数値例では,(1)の解法に比較して(2)の解法の方が良好な結果が得られることが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に実施予定していた,熱弾性場における熱応力最小化と質量最小化に対する多目的形状最適化に関して,その基礎となる熱弾性場問題の部分領域において熱応力分布を規定する単一目的形状決定問題の解法を提案した.形状修正の感度となる形状勾配関数を理論的に導出し,その形状勾配関数を評価するための解析アルゴリズムを提案して,二次元のプログラム開発を行い,解析例から解法の妥当性を確認した. 熱対流場問題に関して,部分領域における温度分布規定と熱対流場全体での散逸エネルギー最小化に対して,昨年度提案した多目的形状最適化問題の定式化や解法には,不備があることを見いだし,理論や数値解法の改善を試みた.そこで新たに,散逸エネルギーを制約関数に設定して,部分領域における温度分布規定のみを目的汎関数に設定した多目的形状最適化問題を定式化し,その問題の解法を提案した.解析例から解法の妥当性を検討し,ある数値例では,(1)の解法に比較して(2)の解法の方が良好な結果が得られることが確認できた. しかしながら,幾つかの三次元問題についてのプログラム作成を行うことはできたが,昨年度購入した高性能計算機では計算機メモリ容量が十分でなかったため,その三次元解析の有効性を示す解析結果を得ることはできなかった.
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今後の研究の推進方策 |
熱弾性場および熱対流場における多目的形状最適化に関して,次の検討を行う予定である. 1.熱弾性場問題: (1-a) 部分境界において熱変形分布および温度分布の両方をコントロールする多目的形状最適化,(1-b) 部分領域における熱応力のコントロールと質量最小化を目的とした多目的形状最適化,などの解析とそれらの検証を試みる. 2.熱対流場問題:部分境界における放熱量最大化と対流場全領域で失われるエネルギーを最小化する多目的形状最適化について,詳細な検証を試みる.
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次年度の研究費の使用計画 |
主に,プリ・ポスト処理を円滑に行うためのパソコン等の購入費,これまでの研究成果を国内外の学会において口頭発表するための旅費等に使用することを予定している.研究成果の発表としては,(a) 熱弾性場の部分領域において熱応力分布を規定する形状決定問題の解法,(b)粘性流れ場全領域において散逸エネルギー最小化し,部分領域において流速分布を規定する多目的形状最適化,および,(c)熱対流場において散逸エネルギーを制約関数に設定して,部分領域における温度分布規定のみを目的汎関数に設定した多目的形状最適化に関して行う予定である.
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