本年度は前年度に開発した高温超電導浮上完全非接触型フライホイールを用い、磁気軸受部の永久磁石量の低減および、新しい磁束集束法を用いた磁気軸受部の磁束の高密度化に関する研究を実施した。 前年度までは積層する円環状永久磁石を3枚とし、磁束収束箇所を2カ所とすることにより磁気回路を構成させる事でピンニング力の増大を計り、これを用いたフライホイールの開発を実施した。ここで問題となったのは軸方向磁気勾配の増大に比して半径方向磁束密度の増加量が小さいため、これに伴い半径方向力の増加量が小さかった。 そこで本年度は、この問題を解決するためこれまで軸方向に積層する事によって磁束集束を実施していた磁気軸受部に半径方向での積層を付加することによって磁束集束の高密度化を行った。高温超電導バルクと対向する面は従来の磁束集束法を適応し、この磁束集束部外周に内径方向に高密度磁束が向かうようにハルバッハ配列した磁石列を追加して軸方向,半径方向共に積層する事で磁束密度の高密度化を図った。この際、使用する総永久磁石量はこれまでの研究に対して10%低減させた。この開発した超伝導磁気軸受の特性を明らかにするため、軸受内周の半径方向及び軸方向磁束密度の測定、軸受の半径方向並びに軸方向復元力を測定し、この磁気軸受を用いたフライホイールを試作し、駆動させることで高速回転域までの安定性を検証した。 この結果、開発した磁気軸受の磁束密度を計測したところ半径方向の最大で約800mT、軸方向で最大約350mTを得たこれは従来の磁気軸受部に対し、1.25倍程度となった。これによりこれまでに比して半径方向、軸方向に大きな復元力を得ることに成功した。また完全非接触フライホイールは無制御で振れ回り共振を乗り越すことが可能となり、低速域から高速域まで安定した回転を実現することに成功した。
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