近年ナノ加工やナノメートル単位の変位測定が行われるようになってきたが、工業界ではナノラジアンでの角度測定はまだ行われていない。先行する研究として、光の臨界角近辺で透過光量と反射光量が急激に変化する原理を使って2つの光センサを使った方法により微小角度測定を行った。本研究では透過光と反射光の分布を観測し、情報量を増やすことで、測定の感度と精度の向上を目的とした。研究期間内に以下の5点を行うことになっていたが、途中で研究の追加(6)があった。 その結果,23年度では(1)専用の頂角と反射防止膜等を施したプリズムの使用による光学系を作成した。透過光の拡がりが少ないために、光強度分布を捉えにいので、透過光ではなく全光を使った方法が新たに考えられ、特許の申請を行った。(2)回転装置に関しては50nrad.を保証できる装置Aの使用とPZTによる装置Bを製作した。 24年度では(3)得られた画像データを処理するプログラムを作った。(4)微小回転装置の性能を先行研究の装置で調べたところ,装置Aでの50nrad.の動きと装置Bによる動きに整合性があった。 25年度では、レーザ光による干渉縞や回折模様が雑音となったので、レーザ光に代えて干渉性の低い光源を利用し、雑音が減った。(5)本装置の微小回転角度測定装置は10μrad.の回転角を測定できたが,目標の感度には至らなかった。そこで(6)本研究の基本である2つのセンサ用いる方法にも改良を加えて、50nrad.の測定に成功した。その結果を2013年度精密工学会春季大会で発表した。 本方法の理論は透過光や反射光の強度がセンサからの電流に比例することが必要であるが、二次元センサでは暗電流のために直線性が保証されていないことが二つのセンサによる方法に比べて極端に測定精度を低下させている.今後、それらを補う研究を続けていく予定である。
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