研究課題/領域番号 |
23560262
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松崎 健一郎 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80264068)
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研究分担者 |
劉 孝宏 大分大学, 工学部, 教授 (60230877)
宗和 伸行 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40304753)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | BTA / 深穴加工 / ライフリングマーク / パターン形成 / 自励振動 |
研究概要 |
被削材回転型のBTA深穴加工装置の実機を用いた加工実験による現象の把握を主目的として研究を行った.加工には刃先交換式のBTA工具を使用し,穴直径は38mm,穴深さは2000mmとした.加工中にオイルプレッシャーヘッド近傍に取り付けたレーザ変位計でボーリングバーの水平および鉛直方向の変位を計測し,被削材に接着した突起物をレーザ変位計で計測することにより位相の基準となる被削材の回転に同期したパルスを計測した.さらに,加工終了後には,円筒度測定により加工穴の形状を精密に調べた.得られた結果を以下にまとめる. 1.標準工具を用いた場合に5角形のパターンが形成されることを確認した.このときの被削材の回転数は350rpmであり,5角形に相当する振動数は約29Hzとなる.打撃試験によって計測した加工開始時における最も低次のボーリングバー固有振動数は約32Hzであり,ボーリングバーの固有振動数,被削材の回転数および発生角形数の間には密接な関係があることが示された.また,パターン発生時の振動振幅は初期段階では大きく成長し,ある程度成長が進むと振幅が飽和した.さらに,ボーリングバーの振動と回転信号との位相差を確認したところ,位相差がほぼ同じ増分で変化し,ライフリングマークが一定のねじれ角で形成されていることが示された.これらの結果は理論とよく一致する. 2.加工穴の円筒度の測定から,加工穴が5角形に変形していること,パターンが工具の相対的な回転方向と等しい右方向にねじれていることを確認した.円筒度は700μm程度の大きな値であった. 3.提案しているガイドパッドを追加配置した対策工具を用いて実験を行った.ボーリングバーの振動の最大振幅は標準工具の場合の1/10以下,加工穴の円筒度は40μm程度となり,ライフリングマークの成長が抑制されることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実機を用いた加工実験による現象の確認を行う上で,まず重要なことはライフリングマークを安定的に発生させる加工条件を見つけることである.今年度は,ほぼ100%の再現性でライフリングマークを発生させる加工条件を特定した上で,ライフリングマーク発生時のボーリングバーの振動や加工穴の形状を測定することができた.また,同条件で対策工具を用いた実験を行うことにより,対策工具の有効性についても確認した.以上の理由から現在までの研究はおおむね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
研究はおおむね順調に進展しているので,当初の実施計画通りに研究を推進する.特に,被削材の回転数,工具の送り,ボーリングバーの支持状態など切削条件の変更がライフリングマーク発生状況にどのように影響するかについて詳細に検討する.また,実機の条件に基づいた解析モデルについて数値解析を行い,実機における振動現象のより詳細な計測結果と比較することにより,モデルの改良を行う.さらに,研究の進行状況に応じて,ガイドパッド配置位置の影響の確認,支持状態の変更や動吸振器等によるライフリングマークの防止対策の検討,工具回転型BTAへの展開を進める.
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次年度の研究費の使用計画 |
計測用センサの追加購入のために400千円程度,実験用の消耗品費として200千円程度,研究打ち合わせおよび成果発表のための旅費として300千円程度,その他論文投稿などの費用として100千円程度の使用を計画している.
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