研究課題/領域番号 |
23560265
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
濱川 洋充 大分大学, 工学部, 教授 (30243893)
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キーワード | 流体関連振動・騒音 / 音響共鳴現象 / 渦 / 管群 / フィン / 音響 |
研究概要 |
発電所の大容量ボイラや排熱回収用ボイラなどの熱交換器では,試運転時に気柱共鳴現象が発生し,振動と騒音が問題になることがある.本研究は,気流中での音響特性の変化と励起源である渦放出音および渦と管との空力干渉音の特性を定量評価し,高精度の発生予測法を開発することを目的とする.本年度は,共鳴評価指数の妥当性の検証とその評価,管群を通過する流れ場における吸音特性の調査,フィン付き管から発生する空力干渉音の定量評価を行った. 1. 管群配列を変化させて気柱共鳴現象と渦放出との関係を実験的に調査するとともに,提案した渦放出の同期化に関するモデル化手法の妥当性を検証した.その結果,異なる配列の場合でも,検証のために導出したコヒーレンスの計算値と実測値とが良く一致しており,モデル化手法が妥当であることがわかった.共鳴評価指数を用いることにより,管群内よりも最後列の管から放出される渦の方が気柱共鳴現象を励起しやすいことがわかった. 2. 管群から噴流を発生させ吸音率を測定したところ,ある特定の周波数付近で吸音効果があることがわかった.この周波数帯や吸音率などの特性は流れの条件によって変化した. 3. ソリッドフィン付き単独円柱から発生する空力音の音圧レベルはフィンピッチ比が0.16のときに増加した.このとき,カルマン渦の周期性が強くなり,スパン方向の相関長も増加した.フィンの形状によって空力音が変化することがわかった. 4. フィン付き2円柱から発生する空力音の音圧レベルは流れ直角方向の中心間距離によって変化した.流れ直角方向の中心間距離が増加するにつれて空力音のレベルは増加し,等価直径との比が0.72付近で極大となり,さらに距離が増加するにつれてレベルが減少する.特に等価直径との比が0.72の場合にはフィン付き単独円柱と比べ空力音のレベルが14.8dB大きくなる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,管群の配列を変化させて,(1)管群からの渦放出音の特性の解明と気柱共鳴励起エネルギーの評価,(2)音響減衰特性に及ぼす気流の影響評価,(3)管群構造物の音響特性の解明,(4)音響減衰特性と渦放出音に及ぼすフィン形状の影響評価,を行う計画であった.(1)については,管群配列毎に共鳴現象の発生しやすさを表す渦の同期化パラメータを導出した.また,管群内の管よりも最後列の管の方が気柱共鳴現象を励起しやすいことを明らかにした.さらに,管群の基本要素である2円柱において,管の流れ直角方向の中心間距離によって気柱共鳴現象の励起エネルギーが変化することを明らかにするとともに,それを定量評価した.(2)と(3)については,管群から発生する噴流には吸音効果があり,その周波数帯や吸音率などの特性は流れの条件によって変化することを明らかにした.これが管群の音響減衰特性に密接に関与するだけでなく,共鳴発生抑止技術としても応用できることがわかった.(4)については,ソリッドフィン付き管から発生する渦放出音を定量評価した.以上のように,全ての項目でほぼ当初の計画のとおりに研究が進展していることから,「おおむね順調に進展している」の評価とした.
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今後の研究の推進方策 |
研究がおおむね順調に進展していることから,研究計画の変更はない.今年度は,新しく提案した発生予測法の各パラメータの検証を行うとともに,これまでの結果を踏まえ,管配列毎の共鳴評価指数のマップを作成する.さらに,ボイラの相似模型実験装置と管群を内臓した音響試験装置を使用して,管群配列と管間流速を様々に変化させて共鳴励起エネルギーと音響減衰量を評価し,これらの結果を合わせて気柱共鳴現象の発生予測法を構築する.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究がおおむね順調に進展していることから,研究費の変更はない.今年度の研究費は,供試体製作費,熱線,流速計用プローブ,解析ソフトおよび保守費などの消耗品と,学会における情報収集および発表などの旅費に使用する.
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