研究課題
マルチボディシステムのダイナミクスのモデル化をディラック構造とそれに付随する陰的なラグランジュ系による枠組みで行った.特に,半直積上のディラック構造に関する考察,及び,2つの異なるディラック構造を相互接続する手法の開発を行い,それに伴う力学系の相互接続についても変分法の観点から明らかにした.また,非ホロノミックな拘束を受ける系として,いわゆる非ホロノミック力学の他にVakonomic力学と呼ばれる力学系が存在することを示し,ラグランジュ部分多様体では,非ホロノミック力学が構成できずに,Vakonomic力学だけが構成可能であることを示した.一方で,ディラック構造の枠組みでは,両者の定式化が可能であることを証明した.また,多体系の応用例として,制限3体問題とそれを用いた宇宙機の惑星間輸送に関する研究を実施した.すなわち,月周回軌道への宇宙機の投入問題を考え,宇宙機-太陽-地球-月からなる4体問題を宇宙機-太陽-地球の制限3体問題と宇宙機-地球-月の制限3体問題に分解して,それらの接続としてモデル化して解析した.特に,円制限3体問題と楕円制限3体問題について,不変多様体を計算し,チューブと呼ばれる多様体によって,輸送軌道の設計を行った.特に,ポアンカレ断面上での有限時間リアプノフ指数の場の2次導関数リッジとしてラグランジュ・コヒーレント構造を導出し,それを解析することにより,楕円制限3体問題のような複雑な力学系における不変多様体を求めることが可能であることを示した.さらに,多体系の陰的なラグランジュ系に基づく数値積分法の開発を実施している.
2: おおむね順調に進展している
半直積上のディラック構造とそれに付随する陰的なオイラー・ポアンカレ方程式や異なるディラック構造の相互接続,さらに,非ホロノミック系とVakonomic系の比較検討など,当初の予想とほぼ同様のペースで結果を得ることができている.また,外国人との国際交流についてもフランス,ベルギーやスペインの研究者と共同で研究が順調に実施できている.さらに,これまで研究協力者として従事していた修士課程学生が本研究に関連する内容で成果を挙げ,今年度から博士後期課程へ進学することができた.今後,より大きな発展が期待できる.
流体や宇宙機への応用など,当初の陰的なラグランジュ系の解析設計手法の目標以上に,本研究の適用範囲が広がってきており,最終年度において,より明確な結果を主張できるように,的を絞って取り組みたい.それとともに,広がりが出てきた部分については,今後の課題として継続的に研究に取り組めるようにも準備もしたいと考えている.
次年度は,最終年度として,これまでに得た研究成果の統合及び成果発表を主な目標として取り組みたい.また,それを補完する上で,安定かつ高速な陰的なラグランジュ系に関する数値積分法の開発に向けて鋭意,研究を推進する予定である.具体的には,シンプレクティック積分法などの構造保存積分法の開発とその検討を行い,本研究のまとめとしたいと考えている.
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