研究課題/領域番号 |
23560271
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
沼田 宗敏 中京大学, 情報理工学部, 教授 (00554924)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 機械計測 / 表面粗さ / ローパスフィルタ / ロバスト推定 |
研究概要 |
高速M推定を用いた3次元表面粗さ用ローパスフィルタを実現するため,下記の2ステップを実施した. 1. 高速M推定を用いた,直交する2方向からなる2次元フィルタの直接適用 1) 3次元密度分布の効率的累積手法開発:各計測データ毎に3次元密度分布を累積すると莫大な計算量を要する.1方向のローパスフィルタと同様,まずx-y方向の2次元密度分布だけを累積し,続いてz軸方向に平均処理を3度繰り返す方法を採った.この手法は,単純な3次元密度分布累積法に比べ3倍-4倍の高速化を実現した. 2) 3次元パラメータ空間の大きさ検討:x方向,y方向の計測データ数をNx, Nyとしたとき,z方向の大きさNzをmax(Nx,Ny)~ 2×max(Nx,Ny)とすることにより,総合的なバランスがよくなることを確認した. 3) z軸方向のM推定値高精度計算法開発:各座標においてz軸座標の最大点を,補正項の導入により分解能の1/10程度で計算する手法を確立し,シミュレーションで効果を確認した. 2. 高速M推定を用いた1方向のローパスフィルタをx方向,y方向に順次適用し,2次元フィルタの高速化を図った.シミュレーションでは,約3.5倍の高速化を達成した. さて,本研究に関し,国内学会(沼田:ローパスフィルタの鍵を握る高速M推定法の提案,表面トポ研究会,2011, 沼田ら:高速M推定を用いた2次元ガウシアンフィルタの提案,精密工学会秋季大会, 2011)と国際会議(M. Numada et al.: A Robust Gaussian Filter by Using Fast M-Estimation Method, ICSM2012, France, 2012)で3件の発表を行い,国際的にも高い評価を得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高速M推定を用いた3次元表面粗さ用ローパスフィルタを実現するため,平成23年度は下記の2ステップを実施する計画であった. 1) 高速M推定を用いた,直交する2方向からなる2次元フィルタの直接適用 2) 高速M推定を用いた1方向ローパスフィルタをx方向,y方向に順次適用し,高速化を図る. まず,1)については,高速M推定を用いた1方向のローパスフィルタを直交する2方向に拡張し,3次元密度分布を直接累積する方法に比べて3-4倍効率的な2次元フィルタを実現した.また,3次元パラメータ空間の大きさを検討し,x方向,y方向の計測データ数をNx, Nyとして,z方向の大きさNzをmax(Nx,Ny)~ 2×max(Nx,Ny)とすると総合的にバランスがよいことを確認した.さらに,各座標においてz軸座標の最大点を補正項の導入によって分解能の1/10程度で計算するM推定値高精度計算法を確立し,シミュレーションで効果を確認した.また,2)については,高速M推定を用いた1方向のローパスフィルタをx方向,y方向に順次適用し,2次元フィルタの高速化を実現した.シミュレーションでは,1方向ローパスフィルタのx方向,y方向の順次適用方法が直交する2方向の2次元フィルタに比べ,約3.5倍の高速化が達成できることを確認した.なお,アルゴリズムおよびプログラムを見直すことで,より一層の高速化が可能であるとの見通しを得た.以上により,当初実施予定の2ステップを100%達成できた.
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今後の研究の推進方策 |
(平成24年度) 3) 1次元フィルタの適用方向の順番入れ替えによる,結果不一致のメカニズム解明: 異常値のある計測データでは,高速M推定型ローパスフィルタに方向特性が生じるので,1方向の高速M推定型ローパスフィルタのx-y方向順次適用による結果と2次元フィルタの適用結果とは異なると予測される.また,1次元フィルタのx方向,y方向の計算順序を入れ替えても適用結果は異なると考えられる.これより,1方向ローパスフィルタをx方向,y方向と順次適用して得られた結果と,y方向,x方向と順次適用して得られた結果とが異なってくる.これらのことを,シミュレーション実験で検証する. 4) フィルタ結果の不一致が生じる計測点に,部分的な2次元フィルタを適用する2段階手法の確立: 1次元のM推定型ローパスフィルタをx方向,y方向に適用した結果と,方向を入れ替えて適用した結果が異なるポイントには異常値があるので,このポイントにだけ2次元フィルタを直接適用する.直接適用するポイント数は異常値の数に比例し,全計測点の一部に過ぎないから高速化を実現できる.これらをシミュレーション実験で検証する.(平成25年度) 5) 3次元表面粗さ用ローパスフィルタの4大特性の達成度検証: 以上の開発手法が(1)ガウシアンフィルタとの結果一致性,(2)高速計算性,(3)ロバスト性,(4)方向特性の4大特性を満足するか,従来の代表的な表面粗さ用ローパスフィルタであるスプラインフィルタ(M. Krystek 1996),ロバストガウシアンフィルタ(S. Brinkmann et al. 2001)と比較検証する.検証データは,研究協力者である3次元表面粗さ測定機メーカーである株式会社小坂研究所の専門家に提供を依頼する.さらに,研究成果をとりまとめ,国内学会および国際会議における口頭発表ならびに,国内外の論文誌で発表を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
(平成24年度)1,000千円 平成24年度の研究計画を進めるため,研究協力者(中京大学大学院生)2名による実験補助(1名あたり150時間)に対する謝金を計上した.さらに,研究協力者(3次元表面粗さ測定機メーカー小坂研究所の専門家)より提供いただくデータへの謝金も計上した.また,研究協力者(3次元表面粗さ測定機メーカーの専門家)との打ち合わせ(1回)および,学会発表(3回)に要する国内旅費を計上した.この他,研究に必要なDVD-RなどのPC関連機器類や文房具などの消耗品に要する費用も計上した. (平成25年度)1,500千円 最終年度には,3次元表面粗さ機からの実データを用いた4大特性の検証実験が必要である.このため,研究協力者(中京大学大学院生)による実験補助の経費として,3名分(1名あたり160時間)の謝金を計上した.さらに,研究協力者(3次元表面粗さ測定機メーカー小坂研究所の専門家)より提供いただくデータへの謝金,および英文校閲に要する謝金も計上した.また,研究協力者(3次元表面粗さ測定機メーカーの専門家)との打ち合わせ(1回)および,学会発表(3回)に要する国内旅費,国際会議発表(1回)に要する外国旅費を計上した.この他,研究に必要なDVD-RなどのPC関連機器類や文房具などの消耗品に要する費用も計上した.
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