研究課題/領域番号 |
23560271
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
沼田 宗敏 中京大学, 情報理工学部, 教授 (00554924)
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キーワード | 機械計測 / 表面粗さ / ローパスフィルタ / ロバスト推定 / 振幅伝達特性 |
研究概要 |
本年度は下記の3ステップを実施した. 1)計測現場で重要視される振幅伝達特性検証:本フィルタは異常値のないデータに対してはガウシアンフィルタと同じ性質を示す.その原因は本フィルタの振幅伝達特性(波長特性)にあるが,本フィルタの重み関数が陽には与えられないため特性はこれまで不明であった.これを計算する手法を確立し,異常値のないデータに対してはガウシアンフィルタの振幅伝達特性と一致することを確認した. 2) 1次元フィルタの適用方向の順番入れ替えによる,結果不一致のメカニズム解明:異常値のある計測データでは,高速M推定型ローパスフィルタに方向特性が生じるので,1方向の高速M推定型ローパスフィルタのx-y方向順次適用による結果と2次元フィルタの適用結果とは異なると予測される.また,1次元フィルタのx方向,y方向の計算順序を入れ替えても適用結果は異なると考えられる.これより,1方向ローパスフィルタをx方向,y方向と順次適用して得られた結果と,y方向,x方向と順次適用して得られた結果とが異なってくる.これらのことを,シミュレーション実験で検証した. 3) フィルタ結果の不一致が生じる計測点に,部分的な2次元フィルタを適用する2段階手法の確立: 1次元のM推定型ローパスフィルタをx方向,y方向に適用した結果と,方向を入れ替えて適用した結果が異なるポイントには異常値があるので,このポイントにだけ2次元フィルタを直接適用する.直接適用するポイント数は異常値の数に比例し,全計測点の一部に過ぎないから,高速化を実現できる.これらをシミュレーション実験で検証した. これらの研究成果を国内学会(精密工学会)で口頭発表した(2件:1件は第1ステップ,1件は第2-3ステップについて).特に,計測現場で重要視される振幅伝達特性については論文(精密工学会論文誌)を投稿し採択通知を受領した(掲載号未定).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
高速M推定を用いた3次元表面粗さ用ローパスフィルタを実現するため,平成24年度は下記の2ステップを実施する計画であった. 1) 1次元フィルタの適用方向の順番入れ替えによる,結果不一致のメカニズム解明:異常値のある計測データでは,高速M推定型ローパスフィルタに方向特性が生じるので,1方向の高速M推定型ローパスフィルタのx-y方向順次適用による結果と2次元フィルタの適用結果とは異なると予測される.また,1次元フィルタのx方向,y方向の計算順序を入れ替えても適用結果は異なると考えられる.これより,1方向ローパスフィルタをx方向,y方向と順次適用して得られた結果と,y方向,x方向と順次適用して得られた結果とが異なってくる.これらのことを,シミュレーション実験で検証する. 2) フィルタ結果の不一致が生じる計測点に,部分的な2次元フィルタを適用する2段階手法の確立: 1次元のM推定型ローパスフィルタをx方向,y方向に適用した結果と,方向を入れ替えて適用した結果が異なるポイントには異常値があるので,このポイントにだけ2次元フィルタを直接適用する.直接適用するポイント数は異常値の数に比例し,全計測点の一部に過ぎないから,高速化を実現できる.これらをシミュレーション実験で検証する. 1)については,評価長さL=4mm,xyのデータ数各400,PV値30μmの3次元データでシミュレーション実験したところ,方向を入れ替えた場合の結果に偏差が生じる場合は,いずれも元データに異常値があることが確かめられた.2)については,上記と同様の条件で,約4倍の高速化を確認した.以上により,当初実施予定の2ステップを100%達成した.これに加え,計測現場で重要視される本フィルタの振幅伝達特性を解析し,異常値のないデータに対してはガウシアンフィルタの振幅伝達特性と一致することを確認した.
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今後の研究の推進方策 |
(平成25年度) 3次元表面粗さ用ローパスフィルタの4大特性の達成度検証: 提案手法が①ガウシアンフィルタとの結果一致性,②高速計算性,③ロバスト性,④方向特性,の4大特性を満足するか,従来の代表的な表面粗さ用ローパスフィルタであるスプラインフィルタ(M. Krystek 1996),ロバストガウシアンフィルタ(S. Brinkmann et al. 2001)と比較検証する.検証データは研究協力者である3次元表面粗さ測定機メーカーである株式会社小坂研究所の専門家に提供を依頼する.さらに,研究成果をとりまとめ,国内学会および国際会議における口頭発表ならびに,国内外の論文誌で発表を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
・当該次年度使用額が生じた状況:購入予定の消耗品の変更により次年度使用額(57,016円)が生じた.当該次年度使用額については,平成25年度において研究成果発表旅費に使用予定である. ・翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画(1,557,016円):最終年度となる平成25年度は,3次元表面粗さ機からの実計測データを用いた4大特性の検証実験が必要である.このため,研究協力者(中京大学大学院生)による実験補助(1名あたり150時間)の経費として,3名分の謝金を計上した.また,研究協力者用のノートPC2台分を新たに計上した.さらに,研究協力者(3次元表面粗さ測定機メーカー小坂研究所の専門家)より提供いただくデータへの謝金,および,学会発表(2回)に要する国内旅費,国際会議発表(1回×2名)に要する外国旅費を計上した.この他,研究に必要なDVD-RなどのPC関連機器類や書籍・文房具などの消耗品に要する費用も計上した.
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