研究課題/領域番号 |
23560273
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
西垣 勉 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (80251643)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 圧電フィルム / 波動吸収制御 / 柔軟アーム / スマート構造 / 振動制御 |
研究概要 |
本研究では,構造物の境界からの反射波を吸収する波動吸収制御法の実現が,薄肉構造物の場合特に難しいという問題に対し,薄い圧電フィルムの利用によって実現させることを目的としている.制御対象モデルとして柔軟回転アームなどにも適用可能な片持ばりをとりあげ,平成23年度はまず,適切に形状を設計された圧電フィルムセンサとアクチュエータがその表面に貼付されて一体化されたスマート片持ばりを作製した.ここで,はりは厚さ0.5mm,長さ300mmのアルミニウム製の片持ばりとし,PVDF(ポリフッ化ビニリデン)圧電フィルムは厚さ40μmおよび100μmの2種類を考え,センサおよびアクチュエータの形状は,長方形状および三角形状とした.まず,これらのセンサおよびアクチュエータの基本的特性の測定を実施し,自由振動制御実験を試みた.ここで,実験においてセンサ信号に混入する電磁ノイズが制御効果およびシステムの安定性に影響するので,フィルタの導入が必要となった.この点については,平成24年度以降により詳細に検討する.次に,従来の研究結果をもとに,このスマートはりモデルの理論解析モデルを構築した.圧電基礎式をもとに,エネルギー原理に基づき基礎方程式を導出して圧電フィルムが貼付されたはりの運動方程式およびセンサ出力式を導き,さらにモード空間での定式化を行った.この理論解析モデルをもとに数値解析を実施することで,圧電素子を貼付したはりの自由振動応答を求めることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度は,圧電フィルムが貼付されたスマート片持ばりを作製し,センサおよびアクチュエータの基本的特性の測定,および自由振動制御実験の試みについては実施でき,また理論解析モデルの作成およびこれに基づく自由振動応答の数値解析を実施することができた.しかし,センサおよびアクチュエータ形状については,それぞれ長方形状および三角形状としており,これ以外の形状とした場合の制御効果については検討できていない.また,センサ信号に混入する電磁ノイズへの対処,およびDSPボード上での波動吸収制御コントロータの構築等には時間を要したため,はりが基礎部を強制調和変位励振される場合のより広帯域にわたっての振動応答については検討できなかった.以上より,本研究はやや遅れていると考えられるが,スマートはりの基本構造は出来上がってきており,平成24年度以降には,当初の研究目的に沿った実施が可能となるように軌道修正していけると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度以降は,種種のパラメータを持つスマート片持ばりの波動吸収制御実験をすすめる.平成23年度までに実施した長方形状センサおよび三角形状アクチュエータの組み合わせによる強制振動制御実験のみではなく,既報で提案した任意形状を有するセンサ/アクチュエータが貼付されたスマートはりの理論解析モデルを構築し,数値解析および実験によって,最も制御効果が大きくなるセンサ/アクチュエータ形状を調べ,さらに構造物のサイズの影響を実験的に検証する.また,最終ステップとして,柔軟回転アームに本研究手法を適用した場合について,理論的および実験的に検討し,その設計方法について得られた知見をまとめていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度にはスマートはりを試作し,自由振動制御実験までは試みたが,はりの振動応答を測定するために,微小変位を精度よく測定できる変位センサの使用を決定することができず,購入できていない.そこで,平成24年度はこれら高速応答・高分解能な非接触変位センサの要求仕様を確定し,その購入に研究費の使用をあてることを考えている.また,種種のサイズのスマートはりを繰り返し作製し,かつセンサおよびアクチュエータ形状を変えて実験することが必要なため,実験装置作成用材料費として使用する計画である.
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